花を絶やさない家

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新居に移る前、私には心掛けたことがあった。
「今度こそ、部屋に花を絶やさない家にしたい」。

この理由は、独身時代のある体験による。

大都会で働いていても、雑誌のグラビアに出てくるようなシングルライフとは程遠い生活をしていた私。
残業も休日出勤も多いのに給料は安く、家賃やら光熱費やらを払ってしまうと、手元にはいくらも残らない。
おまけに、整理整頓が下手で、掃除が苦手。インテリアのセンスもない。
そんな私の部屋でも、花瓶ならぬコーヒーの空き瓶にポンと投げ込んだ花が一輪あるだけで、がぜん華やぐのだ。

しかも、花は生きもの。
目覚めれば
「おはよう」
と挨拶してくれるし、水を変えると
「気持ちいい」
と喜んでくれるし、仕事から帰ると
「お帰り」
と出迎えてくれる。

とは言え、切り詰めた生活の中では、花を買うのも難しい時がある。
それを考えたら、自分の庭で花を咲かせるのがお得なのだろうけれど、都会でささやかでも庭を持つのはなかなか大変。

幸い、今の家の近所には、安価で切り花を置いているスーパーがある。
価格の割にボリュームはたっぷり。
花瓶の他、縁のかけた食器や空のペットボトル、景品でもらったグラスなどにも自己流で活け、楽しんでいる。

花のある日々は人の気持ちを癒し、なだめ、豊かにもする。

写真は、やはり暮らしに花を絶やさなかった、アメリカの画家ターシャ・テューダー