塩あんびん〜どんな味?

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気付かれたことはあるまいか、昔話には「だんご」だの「まんじゅう」だの、いわゆる懐かしのお菓子がよく登場すると。


口承の昔話ばかりではない。
文字で書かれた物語、少なくとも昭和30年頃までに書かれたものには、かなりの頻度でこれらは出てくる。


例えば、明治43年に発表された田山花袋作の長編「田舎教師」は年代的には明治30年代中盤から日露戦争を終えた同30年代後半にかけての設定のもとに書かれたと推定されるが、ここにも、給料が入ったから田舎饅頭を買ったとか、都会に出ている友人が帰省した際に大福餅を一緒に食べたとか、折々に。


まあ、時が時だし、まして農村では甘い物を日常的には食べられなかっただろうから、こんな記述になるんだろうね。


この「田舎教師」の作中に「アンビ餅」なる、聞いたことがないお菓子が出てきたので、調べてみたら、これは「塩あんびん」という、昔は貴重品だった砂糖が手に入りにくいがゆえに塩で味付けしたあんを包んだ、埼玉県北東部(まさに「田舎教師」の舞台だ)に古くから伝わる大福餅だそうな(写真はWikipediaより)。


ふうむ、、、。
「どんな味」
と、想像をたくましくするところにも読書の楽しみがあるし、同時に、
「この世には知らないことが、もっともっとたくさんある。何歳になっても学ばねば。謙虚にならにゃ」
と心底から思うこの頃。