麦や雑穀の宣伝販売から〜「貧乏人は麦を食え」だって?

(注)10月11日に書いた記事。

 

麦や雑穀の宣伝販売について書く前に、まず亡父が語っていた、このセリフから紹介したい。


「兵隊の生活はよかった。3度3度米の飯を食わせてくれたから。家では麦飯ばかりだった」。


そう! 大正13年生まれの父が若かった頃、小作農はまさしく米を作っていながらその米は大半を地主に小作料として納めねばならず、したがって自分たち用の米は常に不足気味。かさ増しのために普段は麦と混ぜたもの(麦飯)を食べ、すべてが米のご飯は特別な日でないとありつけなかった。
つまり、米飯を食べること=ステイタスですらあったのだ。
なるほど、戦後の混乱期がまだまだ続いていた1950年(昭和25年)、
「貧乏人は麦を食え」
みたいな発言をした大臣もいたね(ちなみに、発言の真意は、「所得の少ない人は麦を多く食べ、所得の多い人は米を食べるというような、経済の原則にそった方へもっていきたい」とのことだったそうで、今日では、発言の一部だけが切り取られ、1人歩きしてしまったケースとされている)。
はあ、、、麦は貧しい者が食べるものだったんだなあ、、、。


ひるがえって令和の現在、亡父がかつて常食していた麦飯の麦や、やはり麦同様に米と混ぜて炊いたとされるヒエやアワなどの雑穀は、決して「貧しい者向けの安食品」というイメージではとらえられていないし、販売数量的にも大売れはしなくてもそこそこは売れる。
購買層のメインは、健康に関心が高い熟年女性。
「食物繊維が豊富で腸活と美容にいい」
「素朴な味がレトロ」
「こってりした料理が続くと、こういうあっさり系が美味しく感じられるのよね」
などなど、身体面でも味覚面でも、なかなかの評判。
なかには、
「麦ご飯を食べ続けていたら血糖値が下がってきた」
とおっしゃった方もいた。


面白いものだ。
米を食べたくても十分に食べられなかった戦前の貧困層が今の麦や雑穀の扱われ方を見たら、どう思うだろう?


なお、かさ増し目的で米に混ぜ込まれたのは、麦やヒエやアワだけではなかった。大根、芋、栗、南瓜、山菜、きのこなども対象となった。
ううむ、、、。私の体験による限り、少なくとも芋ご飯と栗ご飯は人気のある試食メニューなのだが、そうか、元は米の不足分を補うための料理だったのだ。


時代は変わった。
次は、この野菜その他を米に炊き込んだ、あるいは混ぜ込んだご飯の話をしたい。