人間は多面体。

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(注)11月20日に書いた記事。

 

人間は多面体だと、つくづく感じる。

 

このたび鬼籍に入った瀬戸内寂聴。ヤフコメに
「幼な子を置いて夫以外の男と駆け落ちするし、その後も次々と妻子持ちに恋して人の家庭に波風立たせるし、出家した後の言動も僧籍者にあるまじきはしゃぎようで、もし彼女に文才がなかったら、ホンマ困ったオバサンでありバァさんではなかったか」
という意見があったが、的を得ていると思う。


もっとも、そんなものだ、人間は。
日本人なら知らぬ者はいないであろう野口英世(写真。public domain)も同じ。超人的な努力を厭わない優秀な人材であり、だからこそ医学の進歩に間違いなく貢献したのだけれど、反面、研究や学問と同じくらい酒と女が好きで、借金を重ね、それを踏み倒す人生を送った(結局、恩師の血脇守之助博士に尻拭いがまわってきて、博士は大変な苦労をした)。
彼もまた、仮に卓越した頭脳と功績がなかったら、ホンマ困ったニイちゃんでありオッサンであったのだ。
だからこそ、人間は面白い。


面白いと言えば、英世の選んだ結婚相手。アメリカに渡ってからの師、フレキスナー博士は、有能な研究者である英世にふさわしい女性を嫁がせようと、それとなく物色していたと伝えられていたのに、英世は行きつけのレストランで、ウェートレスをしながらミュージカルの舞台に立つことを夢見ていた炭鉱夫の娘メアリーを見初め、プロポーズした。


このメアリーに、英世は生前
「僕が亡くなったら、君に残す遺産の中から、僕が昔お世話になった人たちに送金して欲しい」
と一筆残し、メアリーもそれを守った。


かつて自分を助けてくれた多くの人々に、感謝の念は抱いていたようだ。