「理系の女の生き方ガイド」(宇野賀津子・坂東昌子 著)

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(注)10月5日に書いた記事。

 

「理系の女の生き方ガイド」(宇野賀津子・坂東昌子 著)

 

京都パストゥール研究所で免疫学を研究する宇野賀津子氏と、素粒子論専攻の物理学者、坂東昌子氏が、まだ「リケジョ」なる名称もなかった2000年、
「理系にいる女性やこれから進もうという女性を元気づけるような本を書いて下さい」
と、出版社から依頼を受け、共著したもの。


1957年生まれの私が中学生高校生の頃、少なくとも地方では
「女の子が医療分野以外の理系に進むと嫁の貰い手がなくなる」
などと、まことに時代錯誤的、かつ、侮蔑的なセリフが、極めて普通に親たちの口から飛び出していた。
このため、友人の1人は、大学では建築を学びたかったのにあきらめたほどだ。


令和の今の世では、さすがにそんな極端なことを言う親はいないし、(万一いたとしても)子ども世代も耳を貸さないだろうけれど、それでも、日本で理系に進む女子は諸外国に比べると少ないし、当然ながら理系分野で働く女性も多くない。


宇野氏と坂東氏は、
「良くも悪くもマルチな生活を強いられ、粘り強く物事に取り組む傾向がある女性に、実は理系分野は適している」
と説く。そして、進路に迷う女子高生はもちろん、すでに理系を選択したものの会社や研究室で実験実習に時間をとられて家事育児との両立に悩んでいる世代にも、研究と家庭を両立させてきた自分たちの体験から、的確なアドバイスと強力なエールを送る。
いわく、
「家事はなるべく合理化して機械にやらせる」
「世界を広げる子育ては仲間たちとネットワークを作って乗り切ろう」
「完璧な妻にならなくても60点でよい」
「子どもはいつかわかってくれる」
等々。
その意味では、理系に限らず、すべての働く女性に大いに参考になる本と言えよう。


ところで、当書を読んでいて、ある仕事仲間のこんなセリフを思い出した。
「化学が好きで理工学部を受験したが不合格になったので、やはり化学を活かすことが出来る女子大の栄養学科に進学した。当然、女子しかいないから、例えば学園祭の時の会場設立や電気配線などは自分たちだけでやる。でね、その時、わかってん、、、女の子かて、その気になれば大工仕事も電気工事も出来るって。男の子がいないと、というのは、ただの思い込みやったんや」。