(注)11月29日に書いた記事。
子どもの頃は大嫌いだった糠漬けが食べられるようになったのは、たまたま就いたこのデモンストレーター業が私にもたらした功績の1つだろうか。
とにかく、あのニオイが耐えられなく(昔の糠漬けは、はっきり言ってクサかった。それゆえ、口にする気にはとてもなれなかった)、一種のトラウマにまでなってしまっていた私。
当然、デモンストレーターになってしばらくの間は、糠漬けを宣伝販売する仕事を打診されても、決して受けなかった。
もっとも、デモンストレーター歴も2年3年となると、
食物アレルギーの有無は別として、単なる食べ物の好き嫌いだけで仕事を選ぶわけにはいかなくなるのね。
しぶしぶ、本当にしぶしぶと某社の「糠漬けのもと」の宣伝販売を担当したのは、デモストレーター3年目のことだっか。
「一晩で漬かる」。
「毎日かきまぜなくてもよい」。
「におい控えめ」。
この3点が主なウリの当糠漬けのもとに、自宅できゅうりを漬け込み(自宅調理手当あり)、現場に持参して、お客様に試食していただく。
もちろん、試食に出す前、自分でも味見する。
「おや?」
口に含んだ私は、思わず心でつぶやいていた。
「まろやかさが加わって、けっこうイケるやん。あの糠漬け特有の匂いもないし」。
こうして、私は糠漬けを見直した。嬉しいことに、この時の仕事で、私は糠漬けが酒のつまみにもぴったりなことを知ったのである。
「ならば、自分でも漬けてみようか」
と、まずは、生協の宅配で、冷蔵庫にも入るサイズのホーロー製の糠漬け容器を購入した。
あれから十数年。糠漬けは、すっかり我が家の食卓に溶け込んだ。
現在では、りんごやキウイ、パイナップルなど、酸味の強い果物を漬けるフルーツ糠漬け(写真)にはまっている。
これが、美味しいの何の。きっと、小さな子どもにも受けるだろう。
それにしても、幼い頃の体験による刷り込みの恐ろしいことよ!
糠漬けの宣伝販売は、その後も何度か担当したが、現場では決まってかつての私のように匂いが原因で「アンチ糠漬け」になってしまった人に幾人か出会った。
実際、昭和な時代の、特に田舎の糠漬けのニオイは強烈だった。覚えておられる方も多いだろう。
反面、個人的感情だけれど、人生も秋期を迎えたこの年になってみれば、あのニオイは、ある種の郷愁をも伴って思い出されてくるのだ。