9月に入って半ばも過ぎつつあるというのに、真夏並みの暑さが続いている。
健康酢の宣伝販売で滋賀県中部の大型店を訪れた、先週の土曜日もそうだった。
そのことと大いに関係があるのか。通常ならさほど試飲数が出ない健康酢なのに、何と派遣会社が店に送り込んでいた試飲カップ数では不足してしまったくらい、多くのお客さんが飲んでいったのだ(「試飲する」ではなく「飲む」とあらわしたのは、「試飲」の名のもと、冷やかしや単に暑さからくる喉の乾きを潤す目的の人も多かったから)。
まあ、そのぶん売上高にも反映したので、結果的には「真夏並みの暑さ」が販売の後押しをしてくれたわけだけれどね(カップの数が足りなくなったことは、万が一のためにと、自分でも200個ほどのカップを持参していたので全く問題なし)。
それにしても、今回のデモを通して、あらためて感じたのだ。
「健康酢に対する世の認識と消費者の行動は、この20年間でずいぶん変わったなあ」と。
20年近く前になるか。某社の黒酢のデモを担当した時、そこのメーカーの営業マンと、数時間だけいっしょに現場に立ったことがある。
仕事をしながら、営業マンは商品にまつわる話をいろいろと聞かせてくれた。
「うちの会社は昔から幅広く調味料を製造販売していて、酢も取り扱っていたが、特に重視はしていなかった。なのに、健康酢に力を入れることを決めたのは、率直なところ、社長の個人的な体験をベースにした第六感によるものだったんですよ。でも、酢に関する情報を集めているうち、食をはじめ生活習慣の欧米化からくる健康不安を持つ人が増えている現実に訴えかける面があることがわかりましてね。これは、この先、イケるのではないかと。もちろん、購買者からのハガキによるアンケート調査の内容も参考にしました」
プロジェクト・チームが作られ、試行錯誤の末に商品が完成して、モニターによる試飲も終わり、営業員たちは一丸となって各地のスーパーでデモを繰り広げたとか。
「最初は売れなかったですね、どこの店でも悲しいほど。場所を提供した店から嫌味を言われることも度々。しかし、クサらず、コツコツデモを繰り返していたら、ありがたや、酢ブームが起きて、売れるようになったんですねえ」。
もっとも、
「売れるようになった」
と語っていたものの、いや、どうして。私ばかりでなく他の多くのデモンストレーターたちにとっても、当時はまだまだ健康酢は販売しにくい商品の1つだった。
試飲してもらうと、
「鼻にツンとくる」
「飲むと喉がヒリヒリする」
「酸っぱいだけでまずい」
「身体はよくても、このニオイとアジ、続けられんよ」
などなど、評価はさんざん。
時が20年ほど流れた今日では、どうだろう。
上にあけた辛口意見は相変わらず少なくないが、「健康酢=飲みにくい」の図式は、消費者の意識から大幅に緩和された。
健康酢の品質向上もさることながら、丁寧なマーケティング・リサーチ、計画的なPR計画、強いパッションに裏打ちされた粘りに、幸運の神様が味方してくれて、「現在(いま)」があるのだろう。
健康酢の販売史に限らず、この世でおこる大半のことは、入念なマーケティングに熱い行動が加わり、そこへ「運」なる偶然の追い風が吹いて起こることだと、つくづく思う。
写真は、自分で作ったバナナ酢。