(注)11月25日にFB上に投稿した記事。
私にとって、
「ああ、幸せだなあ」
と心より感じる時は、良い本を読んでいる時。
「こんな本を読めるなんて、生きていて本当によかった」
と素朴に生存の喜びに溢れる(=理屈抜きの自己肯定)から、他者にも寛容となり、少々不快な出来事に遭遇しても気にならなくなる。
昨日も、法事を済ませた帰り、ずっと電車内でこの本に読み耽り、帰宅後、一気に読了した。
どんな内容かって?
興味がある方は読んでみて下さい。昨年度の「本屋さんが1番売りたい本」に選ばれただけあって、活字だけで描写しているのに、下手なドキュメンタリー番組などよりずっと迫力がある。
ただ、決して明るく楽しい物語ではないよ。むしろ、暗く、重く、深い。農民文学の傑作とされる「土」(長塚節作)に共通する世界観を持つ内容だ。
作者の吉村昭は、某漁村に保存されていた、恐らくは江戸時代に書かれたであろう古い文献を参考にストーリーを起こしたそうだから、ここにえがかれている世界はかなりの確率で実際にあったことなのだろう。
先進国とされる国に住む人間ですら、ほんの70年か80年前までは「飢餓」と隣り合わせの境遇に身を寄せていた層が大半。
やはり作家の浅田次郎は
「過度な貧乏は人間性を歪ませる」
とインタビューで語っていたし、その通りだと思うけれど、そんな中でも、つまり時に畜生道に落ちながらも、人間、守るものは守ってきたのだね、、、。
なお! この本は世界十数カ国に翻訳され、フランスでは映画化されているとか。
そのことからも、人類共通のテーマを扱っていることがうかがえる。