
さる8月19日に実施された、高校野球の試食バージョンとも言える、トーナメントカップ。
大手調味料会社の試食担当スタッフとして第一回戦に参加した私はクタクタに疲れ、翌日は朝風呂でくつろいだ後は、ほとんど寝て過ごした。
いや、試食メニュー自体は、特にお子様に受ける甘辛味だったこともあって大好評だったし、「美味しいですよ」の証明であるシールも、対戦した某オイルメーカーの試食より多く貼っていただいたのだが、、、もうこの案件は受けないだろうな。
実際の業務をこなす者に負担が偏重する上、仮に「勝った」としてもこちらには何の見返りもない。
「うまく使われている」感が抜けきらないのだ。
そこであらためて思い出したのが、この本。
現在では甲南大学で教鞭をとる社会学者の阿部真大氏が東京大学在学中、まとまった金が必要となり、どうせなら好きなバイクで稼ごうと、休学して宅配ライダーの世界に飛び込んだ時の体験を、綴ると同時に専門である社会学の視点から分析したものだ。
阿部氏は、
「好きを仕事にする、と言えば聞こえはよいけれど、その仕事が例えば検事などのような安定したものならともかく、そうでない非正規やフリーランス形態の場合は、落とし穴がある」
と説く。そして、雇用主が仕掛けたトリックによって、正規労働者でない者は素直であればあるほど、いつの間にかワーカホリック的なワークスタイルに巻き込まれていくと、宅配ライダーの事例をもとに持論を展開していく。
雇用主が仕掛けたトリックがどんなものか、ここで明かすとネタバレになるので避けるが、最後まで読まれた方の中には
「こりゃ俺(私)のことだ」
と思われる方も多いのではないか。
20年近く前に出版された本書ではあるが、ここで投げかけられた課題の1つ、「格差」は、近年、ますます広がっているし、「搾取」方法は巧妙化していっている気がする。
わけても、自営も含めた非正規雇用労働者の方は、ぜひ読まれたい。