「老い力」(佐藤愛子 著)

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佐藤愛子「老い力」


50代より「老い」に関心を持ち、60代70代80代と、折につけそのテーマを各方面で書き連ねてきた佐藤愛子氏の「老い記事」を、懇意の出版社社長のアイディアにより、セレクトして年代順に並べたエッセイ集。


今年101歳となったご本人は3年前の98歳の時に筆を折った(=リタイア)が、現在ではある意味で毒舌ともとらえられかねない(特に男性諸氏に対しては。「愛子節」と称されたことも)シャープなツッコミ満載の記述は、良くも悪くも痛快。
また、失われつつある、これまた良きにつけ悪しきにつけといった感じのかつての「日本」の残光の一部をも現していると言えよう。


佐藤愛子氏の波乱に満ちた人生は、小説をはじめとする一連の著書でも知られているが、だからこそ、ラスト近くの


「私の人生は失敗の連続だったが、とにもかくにもその都度、全力を出して失敗してきた。失敗も全力を尽くせば満足に変わるのである」


の一文(佐藤氏言う「老い力」に通じる)に救われる人は多いのではないかと思うし、かくも気丈な彼女ですら、自宅の他に北海道にもある家への坂道を毎年登りながら、今はこうして歩けているけれど来年は? 再来年は? その先は? と想像する、などのくだりは大いに我々の共鳴を呼ぶのではないか。