セレブスーパーに行く楽しみの一つ

 昨日の現場はいわゆるセレブスーパー。
 真冬並みの気温に加え、デモ実施場所が入り口付近ときている。お客様
が出入りするたびに外からの冷気と寒風が吹き寄せてきて、それはそれは
辛かった。
 もちろん、首筋から足元までカイロを張りまくったが、ほとんど効果な
し。冷えは、あざ笑うかのように、またも仕事上むきだしにならざるを得
ない手先から、体内に入り込んできた。
 それだけに、帰宅して飲んだホットウイスキーの味は最高だったね。
 安物のトリスだったが、ハチミツを少し入れると、心なしか、いっそう
ホッとした。

 セレブスーパーで仕事をする楽しみの一つに、お客様のファッションを
眺めることがある。
 ぶちまけた話、真夏でも短パンにゴムぞうり姿のおじさんや、薄汚れた
スウェットに袖口がテカテカ光るドテラを羽織ったおじいさん、ぶよんと
のびたセーターを腰の下まで垂らし、けばだった靴下でツッカケの音も高
らかに買い物に来るおばさんは、いない。
 皆さん、決して着飾ってはいないごく普通の普段着姿だけれど、清潔で、
よく見れば生地がしっかりとした、感じのよい服装をお召しになっている。
 その上で、帽子、ウェストバッグ、スカーフ、ピアスなどの小物で、さ
りげなくおしゃれ心をアピール。
 観察していて楽しいし、こちらが参考になることも多い。

 わけてもスカーフをうまく使いこなしておられるのには感動。
 防寒も兼ねるスカーフは、極めて実用的でありながら、結び方一つ
で、いろいろな表情が出せる。
 コサージっぽい使い方も出来るし、帽子やバッグに結んでワンポイント
にも。
 使わない時には小さくたたんでバッグの底におさめておけばよいから、
勤めや外出の帰り、ちょっと華やかな場に出なければならない時にも、大
助かりである。

 また、素材にはこだわっても型や色そのものはオーソドックスなタイプ
を愛用されている点も見習いたい。
 セーターにしろブラウスにしろパンツにしろスカートにしろ、基本形の
ものは流行に左右されないから、手入れさえきちんとすれば、体型が変わ
らない限り長く着られる。
 色もベーシック路線でそろえておいたら、組み合わせる範囲が広がる。
 その上で、時には、基本から外れたアイテムで遊んだらよいのだ。

 こうしてみると、セレブな方々もなかなか合理的で経済的な衣料生活を
営んでおられる様子。
 もっとも、ここに至るまでには、持って生まれた環境や生育歴とも結び
ついた「年季」が必要だろうと、想像する。
 ファッションも含め、センスは、形に現れないぶん、付け焼き刃では絶
対に身につかない。ワインが長い年月をかけて熟成されるように、センス
も、その人の内面で、じっくりじっくり磨かれていくものだ。
 それは、ある意味、一生もの。その人が、仮に恵まれた状況の中にずっ
といたとしても、である。

 階級からくるどうしようもない「差」って、あるよなあ。
 庶民の私めは、せいぜいセレブな方々のスタイルをつまみ食いして、さ
さやかにおしゃれをし、小さな喜びを感じていよう。