あれじゃダメだよ と 派遣会社を移籍して大正解だった

 昨日の現場、平和堂長浜店には、ステーキのデモ担当の私以外にもたくさんマネキンが来ていた。
 餃子、マヨネーズ、豆乳、パン、ハム、納豆、お菓子。
 うち、兵庫県は西宮に本社がある大手ハム会社の商品を担当していたマネキン。
 ありゃ何なのよ。
 ひどい。
 
 そりゃ、最初から最後までハイテンションでいることなど、出来ない。
 仕事へのモチベーションが下がり、だれる時は、どんなマネキンにも、一日のうちに何度かある。
 でも、あの子は最初から最後まで、だれまくりだったのよ。
 仕事をやる気が全く感じられない。

 この子、私が以前に所属していた派遣会社にいる。
 私の記憶が正しければ、二年前の六月、私が平和堂八日市店でミツカンの「金のごまだれ」を使って
その日の試食メニューである冷しゃぶを作っていたそばで、確かカルビー社の商品を売っているのを見
た最初。
 当店のパートさんの言葉が忘れられない。
「ちょっと! 何やねん、あの服装。下着が透けて見えるブラウス着て! 今日は主任が休みやからエエ
けど、そうやなかったら、えらいことになるで」

 あれから三年目。ハム・ソーセージのデモを任せられるようになったとは、彼女も会社で「中堅」と
なったのだろう。
 それにしては!

 試食品はウィンナーソーセージだけ。切って、焼いて、試食に出すのみ。
 それだけでもハム・ソーセージのデモとしてはずいぶん楽なはずなのに、まるで積極的に試食を出そ
としない。
 声出しもしない。
 前を行くお客様に試食をすすめもしない。
 試食品のそばにぼーっと立っている。
 表情も暗い。

 そればかりではない。
 頻繁に中座する。
 当然(?)、業務終了時間二十分前にはさっさと試食台をバックヤードに下げ、片付けを始めた。

 彼女をみていて、ああいうマネキンにうるさい担当者が多いハム・ソーセージのデモをやらせる派遣会社の体質が、私が所属していた頃と全く変わっていないことを知った。
 仲良しのマネキンで、やはり数年前までこの派遣会社に登録していた人に
「いくら何でもあれじゃダメだ。今日の現場の精肉主任は優しい人だったから怒られていなかったけれど、そうじゃなかったら彼女は帰されているよ」
 とメールを送ったら、
「そんなもんでしょ。あの会社の基本方針は今も昔も同じ。質より量なんですよ。だから、ギャラがあの額でも文句が出ない。それか、これっぽっちだからこちらも適当にやらせてもらいましょと、マネキンの方で開きなおっているか。ま、どっちもどっち」
 と返事が返ってきた。
 なるほどね。

 正直、私でもあの会社のギャラならハム・ソーセージはやりたくないなあ。
 新人の頃はわからず、こんなものかと思っていたけれど、だんだん情報が集まってくると腹が立って
きたもの。
 そう言えば、あの子、お菓子やパンの時は、あんなにひどい勤務態度ではなかった。
 とすると、やはり、今回、何か不満だったのだ。

 あんなダレダレマネキンと同じ会社でなくて、本当によかった。
 同時に、あの派遣会社を辞めて、別に移籍して、大正解だった。
 心より思った。