寂しい店舗での仕事

 先週の土曜日は、平和堂大石店で、マルコメの「とり野菜なべのみそ」のデモ。

 JR石山駅より、バスに揺られて三十分。
 降り立った大石は、野生のシカやイノシシ、サルが出没する、山あいの村。
 雲(霧?)の上に山が浮かんでいた。

 川沿いに屹立する竹やぶの中の小道(たぶんやぶを切り開いたのだろう)を真っ直ぐ進む。
 川のせせらぎ、鳥の鳴き声、澄んだ空気。
 ちょっとした森林浴気分。
 二十分後、現場である店が見えてきた。

 ずいぶんと奥まった場所に店舗をかまえたものである。
 もともとの人口が少ないところへ、この位置。
 加えて、あいにくの雨。
 せっかく試食の鍋を作っても、食べてくれるはずのお客さんがいない。
 従業員数の方が多い有様。

 そうこうしている間に、鍋の野菜に味噌味が染み込み、ずんずん辛くなっていく。
 つゆそのものは、水で薄めたら何とかなるが、具材の方はねえ!
 午前中の売上はゼロ。

 貴重な体験をした。
 試食が少ない場合は、味噌鍋や醤油鍋など、味が染みやすい鍋はこまめに作り直すことだ。

 午後からこの方法をとったのと、天気の回復で、ぽつぽつ売れ始め、最終的には、お客様数の割に
は上々の販売数と言うか、あんなものではないかしら。
 環境が影響しているのか。
 お店の方もお客様も、純朴な方が多い。

 帰りは少し恐かった。
 真っ暗な薮の中を歩くのだもの。
 シカやイノシシ、サルが不意に出てきたら、どう対処したものか。

 ちなみに、野生のシカの肉は刺身にするととても美味しいと、バスの運転手さんに聞いた。
 すりおろしたショウガをたっぷりそえること。
 これがコツだと言う。

 こういう寂しい店舗での仕事。
 売上を除外すれば、なかなか悪くないものだ。
「試食はただや。食べな損」
 とか
「試食めぐりで一食分の食費を浮かそう」
 とか、こういう厚顔無恥なお客様はいないから、その点でストレスはたまらないからね。