コメントのコメントにも書いたけれど、ステーキのデモについて書いていて思いだしたので、ここで
も少し。
皆さんは、ステーキはどんな焼き方が一番好きですか?
レア? ミディアム? ウェルダン?
私は真ん中のミディアム。
もっとも、試食には、必ずウェルダンで出す。
数年前、某店でステーキのデモをしていて、試食していたお客様にずいぶん怒られたからだ。
「ちょっと、あんた! うちの子に生肉食べさせるつもり? 中がまだ焼けていないやないのっ! O157
とか恐い病気もあるのに、あんた、うちの子が腹痛おこして下痢でもしたら、どうしてくれるっ」
まだ三十そこそこの女性だった。
四、五歳とおぼしき男児二人を引き連れ、試食のはしご。
あちらで菓子パン、こちらでアイスクリーム、そちらでうどんと食べ歩きをした後に、私がデモをし
ているステーキコーナーにやってきたのだ。
まあ、イヤシイこと。イヤシイこと。
ステーキが焼き上がるのを爪楊枝片手に待っている。
「はら、減ったあ」
とわめくガキたちを
「もうちょっとや。待ちぃな」
となだめすかし、焼き上がったステーキを試食用の皿に移すか移さないかのうちに、駆け寄り、他の客を押しのけるようにガバッと上半身を大きく傾ける。
後は親子三人、ガガガガーッ。
まるでハイエナ。
否! それ以下だ。
当のハイエナもあの食べっぷりを見たら、目を剥き、ハイエナみたいと表した私に抗議するだろう。
「わてら、もっと行儀よう食べまんがな。あんなんと一緒にせんといてや!」
そんな肉の味もわかっているとは言えないお客さんが、ステーキの焼き具合について知っているとは
思えない。
「お客さん。ステーキは、中はほんのり赤いくらいが美味しいんです。お肉がジューシーでね」
と説明したところで、
「あら、そうやったの」
とは、決してうなずかないはずだ。
ここは、下手に
「はい。どうも申し訳ございません」
と出ておくのが利口。
この出来事があって以来、私はステーキは必ず中までしっかりと火を通すようにしている。
そうしておいて、口で一言つけくわえるのだ。
「今日はしっかり焼かせて頂きましたが、本当は中はすこぉーし赤いくらいの方が、お肉が柔らかくて
美味しいんですよ」
と。
何たって、クレームほど恐いものはないからね。