理論と体験

 理詰め説明とは言っても、女性の場合はこれが難しい場合もある。

 と言うのは、全くの偏見なんだけれど、女性が商品をあまりに「理」のみで説明したら生意気に
感じられることがあるわけ……男性からばかりでなく、我々女性からも。
 どうしてなんだろうね?

 健康食品のセールストークを聞いているとよくわかる。
 男性の営業マンが、あたかも学術論文をくだいて説明するような話し方をしてもほとんどのお客
様はふんふんと素直に聞いている。
 我々、女性マネキンがあれと同様の行為をとったら……???

 女性は、体験主義と言うか、自らの体験をいかし、お客様の共感度を引き出すセールストーク
すると、うまくいく確率が高まる。

 良い例が作家の瀬戸内寂聴だ。
 夫の教え子と恋に落ち、夫と娘を捨てて駆け落ちした体験を、これでもかこれでもかと言うほど
書き、話し、
「一生の罪です」
 と締めくくって、女性読者の共感を誘い、人気を持続させてきた(本当にそう感じているのなら、
おおっぴらにしなければいいのに)。
 出家の時だって、
「原因の一つは別れた夫のもとに置いてきた娘の婚礼にタンスをおくったところ、おくり返されて
きたことだ」
 というエピソードが背後を飾り、女性読者の関心度をいやがおうにも高めた。 

 まあ、女は、同性である女に一時は憎まれても最後には好かれないと成功出来ないということか
も知れない。

 理論の上に個人的な体験をミックス。
 そこからにじみでる暖かさ、人間味。
 こういうセールストークが出来たら、いいね。

 ちなみに、瀬戸内寂聴の小説やエッセイ自体は、私は大好きです。