気は張っていても

今日も昨日と同じ現場で、同じ商品を担当。

 行きの電車でショックなことがあって。

 真向かいの席に座っていた、推定二十代後半からせいぜい三十代前半のお兄さん。三重あごにして
三段腹ながら、マスクは端正。女の子受けする甘さがある。
「この人、痩せたらモテるだろうなあ」
 と思ったその瞬間、お兄さんは、
「ふわぁーっ」
 と臭い息をこちらに吐きかけ、大あくび。
 そのまま大股を広げ、両腕をだらんとしたふがいない風体のまま、眠り始めた。
 三十秒もしないうちに、周囲の人の眉をひそめさすほどの高いびき。
 カエルのようなな腹が、ふくらんでは、しぼむ。

 悲しくなった。
 並の神経なら、見ず知らずの相手とは言え、異性にそんなハシタナイ態度を示したりはしない。
 それをお兄さんが示したということは、私をもはや女としてみていない証拠。
 そう! 女ではないおばはんになら、どんな姿も見せられるやね。

 ガクッと落ち込んだ。
 気は張っていても、肉体は正直だ。