昨日の日記の続きを書こう。
その前に趣旨を要約。
町に出て見ず知らずの異性に話しかけ、お茶に誘うことが疑似恋愛となり、結果、脳が活性化するなら、私たち試食販売(マネキン)の仕事に就きなさい。男性マネキンも、数は多くないけれど活躍していますよ。
とは言え、
「そんな機会はないよ」
との声も聞こえてきそう。
確かにね。
派遣会社によっては、募集を女性に限っているところが珍しくないし、事実上の年齢制限をもうけている場合もある。
H氏が定年退職後にマネキンになれたのは、前職が食品会社の営業マンで小売やマネキン業界に詳しかったことと、人当たりがよいこと、さらに一応は料理も出来ることが評価された公算が大きい。
では、そうでない人は?
お薦めする。
芸能人に疑似恋愛しなさいと。
先々週、久方ぶりに再会した同業者の変貌ぶりには驚いた。
一皮剥けたように、美しく、艶っぽくなっていたのだ。
「実は、Kポップのある歌手のファンになってもうて」
彼女は打ち明けた。
「GWに、息子の家でこの歌手のコンサートDVDを息子の嫁といっしょにみていて、ふと思い出したんよ、高校生の頃にジュリー(沢田研二)に夢中になったこと。気がついたら、韓国のその歌手の動画をチェックし、彼に関する情報を集めるようになっていた。でも、それだけやよ。追っかけ言うたかて、パソコンの中でだけや。本当にソウルまで飛んで行くわけやない。第一、そんな金も暇もあれへんもん」
彼女は
「彼が何を歌っているのか、翻訳なしで知りたい」
と、韓国語の勉強も始めた。
「毎朝、必ず三十分、DVD聞きながらテキストに向かっているよ」
いいねえ、こういうの。
かわいいじゃありませんか。
特に、私は、決して幸福とは言えなかった彼女の結婚生活を彼女自身の口から聞いて知っているだけに、余計にそう感じてしまうのだ。
プライバシーがあるので詳細には書けないが、要するに、イギリスの皇太子チャールズさんと元妻で悲劇的な死を遂げたダイアナさんみたいな関係だったのだ、彼女とご主人の間は。
彼女とダイアナ妃の大きな違いは、彼女が離婚しなかったこと。さらに、難病を患った揚句に女に捨てられ、戻ってきたご主人の死に水をとったことである。
「息子は、浮気ばかりして俺たちを放って出ていった親父なんか親父とちゃう、面倒みんでええと怒鳴ったけれど、それは母親の私を思いやった言葉であって、本心やないことはわかっていた。何と言っても子どもたちの父親やからね」
彼女のことを無類のお人好しと笑う人もいるかも知れない。
だとしても、誰も彼女を軽蔑出来ない。
温かみのある柔らかい接客、丁寧で優しさに溢れた言葉使い。
「この人、結婚する相手が違っていたら、本当に幸せな奥さんになって、まわりの人も明るくしただろうな」
心より思う。
ご主人が逝って十年。
ふと目にした、異国の、親子ほども年齢の離れた歌手に架空の恋をした。
彼女と歌手の人生がクロスすることは、過去も現在も、恐らく未来もない。
すべてはイマジネーションの中の出来事。
幻想の中で、彼に見つめられ、アイ・ラブ・ユーとささやかれる(韓国語ではどう言うのだろう? 中国語では我愛君、ウオ・アイ・ニーなんだよね)。
すっばらしいじゃないの!
100%自分の思いのまま。
しかも、現実の世界では、誰をも傷つけない。
芸能人相手の疑似体験なんだからね。
恋愛の美味しいところだけいただけるのだ。
その上で、脳の働きは活発になり、肌もきれいになって、表情もイキイキ。
本当にすっばらしい!
尚、彼女が熱狂している歌手の動画をのぞいてみた。
ショタっ気があるとは、このタイプ? すらりと手足が伸び、顔の輪郭がすっきりしていて、童顔ながら女の子受けする甘さがある。声も親しみやすい。
は!
ジュリーも三十年前はこんなふうだったのよね。