二十代に戻ることが出来たら

日曜日の午後、現場の古株のパートさんに
「商品がなくなるから、もうあんまり売らんといてや」
 とクギをさされたことは、前の投稿で書いた。
「前日から頑張って飛ばし抜いたのに、何て勝手な!」
 と、一瞬あきれたが、
「ま、売れ、売れ、全部売ってや」
 とプレッシャーをかけられるよりはよいと気をとりなおし、お言葉に甘えることとした。
 販売はほどほどにして、マンウォッチングをはじめたのだ。

 店舗にはいろいろなお客さんが来る。
 一つ気づいた。若い女の子の過剰アイメーク。
 猫も杓子も、つけまつげヒラヒラつけて、アイラインもばっちり。下の線もびしっと決めている。
 どうしてそんなにデカ目に見せたいわけ?
「だってぱっちり目の方がかわいく見えるもん」
 
 そうお?
 昔の映画を見直すたびにつくづく感じる。「細い」「小さい」とされている中野良子や田中裕子、
山口百恵の目元なんか、いわゆる綺麗系ではないかも知れないけれど、メッチャ色っぽいよ。
 特に田中裕子。
 あの流し目。故緒形拳がクラッときたことがあると言う。
 少なくとも、あれやこれや手をいれた「人工的ぱっちり目」より、ずっとチャーミング。

 ガンとの壮絶な闘病記が多くの人の感動をよんだ故ジャーナリスト、千葉敦子さんが、エッセイ
に書いていた。
「私が日本の若い女性に言いたいことは、ファッションやお化粧に費やす時間を減らし、その浮い
た分を若い今だからこそ出来ることに投資すべきだと言うことです」
 私は、いささかアメリカかぶれの傾向があった千葉さんの主張には多くの疑問も感じている人間
だが、この説に関してだけは、100%賛成する。
 ホント、若い時にしか不可能なことは、ものすごく多いのだ。

 スポーツ、語学、楽器演奏。若い方が断然有利。
 資格のための勉強も、ある意味で暗記力との勝負みたいなところがあるから、脳が柔軟な若い時
にスタートするに越したことはない。
 旅。体力があり、フットワークも軽く、感性もみずみずしい若い時代にこそおすすめ。

 気合いを入れていても、容姿はどんな人も衰える。ディードリッヒ並みの脚線美の持ち主でもお
ばさんのミニスカートは見られたものではないし、デヴィ夫人だって顔がアップになれば「ああ」
と思ってしまう。
 
 そこへいくと、いったん身につけた資格や技術は一生もの。

 とは言え、若い時にはわからないんだな、これが。

 もしもう一度二十代に戻ることが出来たら、あなたは何をしますか?
 私は語学と料理を気合いを入れて学ぶ。
 海外で活躍する日本料理インストラクターの道をめざすのだ。

 ちなみに、仲良しの仕事仲間は
「ドイツに留学する」
 と答えた。