マネキンの社会的地位 その2

午前中の用事が一段落したので、再び昨日の続きを書こう。

 マネキンの社会的地位向上のためには身分が保証された正社員登用が不可欠と、投稿した。
 反論がくるかも知れない。
「メーカーや店舗はそれも可能でしょう。でも、マネキンを紹介して手数料をもらい、それで経営がなりたっているマネキン紹介所や派遣会社では、無理ですよ。そもそも、仕事が不定期でしょ」
 と。

 いやいや。
 そういう紹介所も派遣会社も、全員とは言わないが、一定の人数は正社員化したらよい。
 仕事がない時は内勤でさまざまな業務をこなしてもらえばよいのだから。

 そうしてマネキンとしての実績を積み、マネキントレーナーとして、新人たちを指導して欲しい。
 こう願うには、わけがある。

 ほとんどの派遣会社で、マネキンの意識向上と相互の親睦、情報交換を兼ね、社内研修が行われてい
る。
 ただし、「指導」するのは、本社の事務スタッフ。現場には一度も、あるいはピンチヒッターとして
ほんの数回しか立ったことのない人たちである。
 これ、おかしいと思わない? 実際にマネキン業務をしたことのない人がどうしてマネキンに「ああ
しなさい。こうしなさい」と「指導」出来るのだろう?
 ずばり言ってしまえば、あれは研修は研修でも、メーカーや店舗、本社にとっての使いやすいマネキンを養成するための研修だ。私たちは、やはり「使われる」立場であり、こちらからの要望は出せない
のだ。

 私はマネキン業に就いてまだ八年目ながら、これは、女性にとって自らの生歴や生活上の体験をいか
すことの出来る、なかなかいい仕事だと感じる。
 例えば、紙オムツの推奨販売。よく十代や二十代はじめの女の子が担当しているけれど、子どもを育てた経験がある熟年女性の方が絶対によい。お客さんと話をしていると、けっこう育児上の悩みを告白されたり、相談も受けるからだ。育児のアドバイスは販売マニュアルや商品カタログを読んだだけでは出来ない。
 タマネギとかピーマンとか一品加えるだけで酢豚などが出来るクイック料理のソースも同じ。毎日台所に立っている主婦なら、共働きでなくてもこういうソースが重宝する日があることを、自分の暮らし
と重ね合わせて知っている。
 さらに、時代は男女共生社会。これからの時代は、男性でも子どものおしめを変えたり、ちょっとしたおかずくらい作れないといけない。
 「男は仕事。女は家庭」なんて、あと五、六年もしないうちに誰も口にしなくなると思う。

 さらにさらに、付け加えさせていただけるなら、晩婚化や離婚により「おひりさま」が増えているか
らこそ、基本的な家事能力は万人が身につけるべきで、それを助ける意味でも、ますます良い意味での生活感を備えている人がマネキンに求められるのだ。

 残業して疲労困憊して帰ってきて、かと言って店屋物やコンビニ弁当では栄養が偏るし、精神衛生上
もよくない(印刷会社に勤めていた時は退社するのが早くて夜の九時半。それから三十分かけてアパー
トに帰ってきてコンビニで買ってきたおでんを食べていたのだが、わびしかったなあ)。
 そこを、ほんの少し「えいやぁっ」と気合いをかけ、五分かければ出来上がりのおかずを作る。
 気分が違うよ。
「忙しくてしんどいけれど、いいこともあるさっ。明日もガンバロー」
 ココロがこんなふうに前を向く。
 
 それだから、今後、マネキンはマネキンと言うより生活感覚のあるデモンストレーターとしての資質の方を求められていくはずで、そのためには雇用条件を整備することでマネキンの質的向上をはからないといけない。
 その第一歩として、正社員で新卒採用し、結婚や出産育児などもクリア出来るような保障も整え、長く勤めてもらったらいいと提案しているわけ。
 もちろん、男性社員にも育休はあり。
 子どもの離乳食も作ったことのある男性マネキンがベビー用品を販売するって、カッコいい。