がら完売し、気をよくしたこともあって、
「私はこの仕事が好きなんや」
と、あらためて認識したことは、既に述べた。
ルンルンルンと、仕事を終えて駅までのタクシーをおりた後、足取りも軽やかにホームに向かった私。
そこで、メイン(現在のところ)としている派遣会社Aの先輩と会った。
挨拶と近況報告と雑談をすませた後、ずっと気になっていたT製薬の一件を聞いてもらった。
「そら、腹が立つわ」
先輩は即答した。
「クレームがあったらあったで、ちゃんと日付や現場、内容を明らかにしてくれんと。そんな曖昧な
言い方では、こっちは対処のしようがないやん」
その前日、タカナシの牛乳を宣伝販売した近商ストア木津川店で会った先輩も、同じことを言った。
「あんたが言うていることは正しい」
その後で
「でも、正論が通らんこともあるのが世の中やからなあ」。
あらあら。お二人とも同じことをおっしゃるなんて、私の考え、そうおかしくもないんやと安心し
た。
そこへ、着いた近江八幡駅で出会ったもう一人の先輩。帰路の新快速で同席し、ころあいをみつけ
て、打ち明けた。
「実は、T製薬の仕事で……」
この先輩も、前の二人と同意見。
ふっきれたよ。私はT製薬がらみのくだんの件に関し、常識はずれの反応を示したのではなかった
のだ。
皆、T製薬の態度に疑問を感じているし、それに一方的になびいたエージェンシーと派遣会社の対
応にも首をかしげている。
でも、私たちは個人。巨大なT製薬と、どうやって対局に立つ?