ほとんどの人は金で悩む

十一月初めに仕事をした二店舗三日分の仕事のギャラと立替金と交通費がまだ振り込まれていない。
 この時の仕事依頼主、毎月末締めの翌月15日払いで、これまでただの一回も支払い遅滞はないのだけれど。
 月曜日まで待って、それでも振込されていなかったら派遣会社に電話をしよう。

 何たって、27日には某カード会社に11万円支払わないといけないのよ。
 これが、九月と十月に担当した、高額の買い取り費用を要することで有名なメーカーの立替金額。
 ね、マグロだとか国産のステーキだとか続けて担当すると、立て替えはこんな額になるのよ。
 クレジットカードが使用出来ないと、仕事を受けることも出来ない。

 まあ、二十日には、別メーカーからかなりの額が振り込まれるはずだから、何とかなるでしょ。
 今月は銀行の定期預金も出来たし、キャッシングも二度繰り上げ返済した。

 先月の末にマルコメの仕事で出かけたベルファ都島のチラシに、試食販売のことを「ライブ販売」と書いていた。
 本当、試食の仕事はステージ場のミュージシャンのパフォーマンスにも似ている。

 生活や仕事が不安定なところもそっくり。
 
 愛妻家としても有名なアメリカのロックギタリスト、J・Pは、バンドでの成功をおさめた後、ソロ
アルバムを全財産そそぎこんで制作し、それが全く売れなかったために数年間は貧窮を極めた生活を
したそうな。
 彼らも、表向きの華やかさとは裏腹に金に困っている部分がけっこうあるのかも知れない。レコー
ド会社だって商売だから、アルバム制作に必要な全額をそのミュージシャンに出すとは限らない。不
足分は、ミュージシャン自身が出すケースも多いだろう。
 アルバムが完成したら、その宣伝用のコンサートツァーに出るのが普通。
 これが金がかかるよね。移動費だけでも、すごいのではないかな。器材を運ぶトラックのレンタル
代、いくらだろう?
 まあ、アルバムが売れたら元は返ってくるが、売れなかったら???

 J・P。最初の奥さんとはこの時に別れた。惚れ抜いていることを公言している現在の奥さんは二人
目。ショービジネスは虚構の世界。罠はいくつも口をあけて待っている。だからこそ、今の奥さんと
子どもたちを大切にしていきたいのだろう。彼らだって人間。最終的に頼れるのは家族のはずだ。

 こう考えると、人間ってけっこう平等だなあ。
 ほとんどの人は、金で悩むようになっているのだ。