努力

今日は年賀状を書き終えてしまおう。

 明日は出かける。
 明後日は初仕事。

 ネオ禁酒したので、酒は寝る前の一杯だけ。
 おかげで文庫本を一冊読了することが出来た。

 山田勝著「ドュミモンデーヌ」。
 ドゥミモンデーヌとは、19世紀のパリ社交界を裏から動かしたと伝えられる高級娼婦たちの呼称。彼女たちの大半は下層階級の出身で、貧苦と屈辱の中に幼年時代を過ごした。
 長じると、女であることを武器に、政府要人や財界有名人、著名文化人たちに近づき、美貌と才知で野心で彼らの心を掴み、フランスの政財界や文化面に暗然たる影響を示した。
 何せ、政府の密談の席にまで彼女たちが同席することがあったというのだからね。

 まあ、持って生まれたものや運もあったのだろうけれど、それ以上に、私は彼女たちの必死の努力に惹かれる。
 食うや食わずの赤貧の境遇に生まれ、洗濯女や子守り、女工などをしながら、せっせと自らの資質を磨いたのだ。あの当時、フランスで読み書きが出来た、否、それを学ぶ機会にいた女性たちは、ほんの一握りの階級にいた人たちだけだったはず。
 それを、下層に属する彼女たちは何とかマスターし、本を読んで教養を蓄え、優雅な着こなし術や、TPOに応じたマナーも身につけた(美貌だけではトップクラスの男に相手にされない)。
 燃え尽くさんばかりの野心を糧に、死にものぐるいで努力したことだろう。
 その点は拍手を贈りたい。
 なぜなら、私も含め、ほとんどの人間は他人を羨むばかりで終わってしまうからだ。

 格差社会と言われる。
 もっとも、歴史をひもとけば、格差はいつの時代にもあったよね。
 その「格差」を超えんと、努力した人も、いつの時代にもいた。

 現在、他人を羨むばかりで自分では何もしない人が多いと思う。
「自分が現在みじめなのは社会が悪い」
 と言うわけだ。
 それも一理あるかも知れないけれど、そうやって怨嗟をつのらせているだけでは、いつまで経っても変わらない。

 羨んでもいい。
 ただ、そのエネルギーを少しでも状況を打開するために使えば、違ったものが見えてくるよ、きっと。
 努力は常に報われるとは限らないにしても、羨んで、愚痴をこぼしているだけより、ずっといい。