パーカーは仕事の行き帰りに絶対に必要だから、購入は仕方がないとして、悩むのはデニムのショートスカート(ミニスカート)。
五十路を超えたおばはんとなった身には、さしあたって、なければ困るものでもない。
にもかかわらず、昨年からチラチラ心の隅をかすめていたわけは
「もう一度ミニスカートでさっそうと歩きたい」
という、ズバリ「若さへの回帰志向」である。
中学生の時から、ミニスカートとショートパンツ、そしてジーンズが大好きだった。
一番の理由は、ずばり、動きやすいから。
膝より長め丈の制服のスカートのように、脚にまとわりついたりもしないし、暑苦しくて重々しいイメージもない。
人間は飾り物ではない。跳んだり、走ったり、笑ったり、食べたり、活動するものである。
私には、女性が外に出て行くのと並行して、ウェストを締め付けるコルセットや足首まで丈のあるドレスがすたれていった理由がわかる気がする。
ミニスカートもショートパンツもジーンズも、心置きなく跳ね回るにはじゅうぶん。
その分からか。いずれにも「若さ」がつきまとう。
オバサン体型になっていなくても、歳がどうしてもあらわれてしまう顔と服装のミスマッチがおきてしまうのだ。
試着室に入り、手にしたスカートをはいてみる。
郊外に引っ越しして以来、歩くことが多くなって身体がしまってきたから、ウェスト58の娘時代のサイズは難なくクリア。
問題は顔。
悔しいけれど、ムスメじゃない、もう。
店員さんを呼ぶ。
「はあ? ミニスカートってそんなもんですよ。よくお似合いじゃないですか」
「うーん、あなたみたいに二十代ならね!」
「どうしても気になるようでしたら、足元をブーツにされるとか、トップに少しかっちりとしたジャケットを持ってこられるとかされたらいいですよ。締まりますから、幼く見えません」
プロの応答である。
そこにも感心し、エイっとばかりに購入した。
ドーナッツを頬張りながら、行き交う人たちを観察する。
ミニスカートやスキニーパンツに身を包んだ若い子たち。私たちの世代を振り返れば、全般にスタイルは格段によくなっているけれど、皆が皆そうではない。
それでも、どの子もサッパリキッパリとした表情で歩いている。
まさに、さっそう!
気づいた! 自信なのだ!
大根足だの、六頭身だの、太めだの、関係ない。
「私はこの服が好き。その服を着る私も好き。だから着る。お気に入りの服を着るとハッピーになれる」
これ、これなのだ。
人の目は、とりあえず横に置く。
まずは自分の気持ちに忠実になる。
この主体性こそが、服を、人を、輝かせるのだ。
せっかくだもの。
服は堂々と着てあげよう。
年齢はええやね。
自分で自分を「おばさんだから」と決めつけて枠に押し込むと本当におばさんになってしまう。