うぐいすのウェルカムコール

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日曜日の現場は、グルメシティ加茂。
京都と奈良県の境目近くにあるJR加茂駅から、
バスで五分ばかり走ると、見えてくる。
食料と日用品に特化した、フラットな、こじんまりとした店だ。
周りは、その昔、山か丘であったか?
バスを降り、店舗に向かって歩き出した私の頭上で、
突如うぐいすの鳴き声が響き渡った。
風光明媚な景色そのままのトーンで幾度も幾度も。
「ようこそ加茂にお越し下さいました」
そう言っているようだった。

心を洗われた。
先ほどまでの苛立ちが、瞬時にして消えた。

現場がある土地が初めての場合は、それなりに緊張しているものだ。
日曜日は、特にそれがひどかった。
遠い土地にあるわけではないのに、
電車を何度も乗り換えねばならない上、
途中駅の木津まで来て、事故による列車の遅滞を知らされたからだ。
加茂駅発のバスの時刻は迫っているのによりによってと、
遅れの原因を作った「無謀運転の車」(駅のアナウンスがそう言っていた)
がうらめしかった。
「もう! 遮断機が降りかかっているのにムリヤリ渡ろうとするから、
踏切に取り残されたんや。
こっちは、決められた時間内に現場に入らな、遅刻ということになって、
そのぶん残業せなあかんねん。
それでなくても、販売が難しい創味食品の仕事やのに!」

苛立ちは、木津駅を七分遅れで電車が経ち、
加茂駅に到着するや、抱えたカートの重みも何のその、
ホームをひた走って
(バスに遅れたらタクシーに乗らないといけない。お金がかかる。
事情ありだからタクシー代は出るだろうけれど、
当座はこちらで立て替えるんだからね。
使わないにこしたことはない)
停車中のバスに飛び乗った後も、続いていた。

もったいないことをした。
豊かな緑の中、
人も時間も風景も、のんびりと流れる、
ほっとする土地だったのだ。
陽は高い。
光は澄んでいる。
風はほのかに薫る。
自然が与えたもうた、新しい季節の始まりの恩恵。
電車の窓越しに、
情景を左右に広げるバスの前方越しに、
存分に受けたらよかったのだ。
少々の遅れで、仮に懸念された事態になっていたとしても、
ようく考えたら、さしたる問題ではない。

うぐいすのウェルカムコールは、
かさばった心のスイッチをすみやかに
入れ替えてくれた。
さあ、いつもの仕事モード!

この瞬間から、商品完売に向け、パレードが始まった。

写真は、途中駅のJR祝園駅から写した桜。