葬式

実父が、昨日早朝に、永眠した。満89歳だった。

実母が亡くなって以来、ホームに入っていた父。昨朝、ホームの職員が部屋を訪れると、息絶えていたと言う。
穏やかな死に顔だった。苦しむことなく、自然死したものと思われる。それがせめてもの救いだった。

肉親の葬儀に関しては、嫌な思いをしたことがある。
以前に所属していた派遣会社でのこと。
湖北にある某店で販売応援をしていた私の携帯に電話がかかってきた。姉からだった。
「おばあちゃん(私の実母)の心臓が止まった。今、しかるべき措置をしてもらっている」。

ことがことだけに、その店の責任者に話すと
「すぐに病院へ行ってあげなさい。こちらはかまわないから」。
その上で派遣会社に連絡し、早退させてもらった。
母はそのまま意識が戻ることなく、逝った。

後日、派遣会社から
「その日のギャラは、働いた時間分も含め、いっさいお支払い出来ません」
と、メールがきた。
「メーカー様にギャラをご請求できませんので」。

こんなものかと思っていたら、夫が激怒した。
「事情が事情や。メーカーにギャラを請求出来んのなら、派遣会社が立て替えでその分を払わんかい」

派遣会社は
「マネキンの中には嘘をついて早く帰る人もいますから」。
夫は、ますます怒った。
「その人間の普段からの仕事ぶりをみとったら、嘘かどうかわかるやろ!」

結局はらってもらえたが、この手の話や、もっとひどい実情は、我々の世界ではけっこう聞く。
この時、ギャラを立て替えで払ってくれたこの派遣会社は誠意があったと、今になって、つくづく感じるのだ。

実質、日雇いの我々。そして、率直、生活を背負っているケースが多い我々。肉親の危篤にも通夜にもかけつけられず、唇を噛む思いをした人は少なくないと想像する。