怖い夢~自分の人生を認められない人間は他人の人生も尊重できない。

怖い夢をみた。こんな内容だ。

「私」は田舎から出てきて、とある工場の寮に、先輩と二人で住んでいる。
先輩と「私」は、卑しい生まれも幸薄い育ちもそっくり。が、先輩は周りからの人望厚く、頭の回転が速い上に女優のいしだあゆみ似の美人でもあったため、「私」はたちまち先輩の信奉者となる。

やがて、寮周辺で不審な殺人事件が起こり始める。被害者は寮の住人ばかりではない。寮に荷物を届けに来た宅急便業者とかたまたま寮の前を通りがかった人とか。
警察は懸命の捜査をするが、犯人は捕まらない。

そんなある日、「私」は先輩の言動にふと不審を覚えた。
「もしかしたら、、、?」
いや、まさかと否定しているうち、先輩が外出した後をつけ、決定的な現場を見てしまう。
愕然として、夢遊病者のようになって寮にたどり着き、そのまま横になる。
目が覚めてみれば、寮全体が何やら不穏な空気。先輩が殺人犯として逮捕されたと言う。
犯行動機は不明。いわゆる無差別殺人。

ここから「私」の苦悩が始まるのである。
先輩に疑惑のを感じ始めた時点で、打つ手はあったのではないか。なぜ、先輩の暴走を押さえることが出来なかったのか。そもそも、疑惑を寮の管理人なり工場長なりに伝えるべきではなかったのか。何より現場を目撃するやすぐに警察に通報しないといけなかったはずだ。これらの事柄から、「私」は先輩と同罪なのではないのか、、、。
なのに、警察の事情聴取で、
「同じ部屋に住んでいて、あんた、何も気がつかなかったのかね?」
と聞かれ、
「気がつきませんでした」
と答えてしまう。

先輩は、裁判が始まる前に、自殺。
直後、自殺の前に書いたのであろう「私」への手紙が届く。
「私とあなたはよく似ています。下層の出自も不幸な育ち方も。でも、私は私。あなたはあなた。私はあなたが毎朝インスタントコーヒーを幸せそうな顔で飲むのを見て、とても羨ましく、とても憎たらしかった」。
この瞬間、「私」の苦悩は吹っ切れた。

「私」は、その後、生まれ育ちの悪さをカバーできるだけの技能を身につけ、まあまあの人生を送っている。
それでも、先輩の命日には、毎年花を抱えて墓参りに行く。
先輩に憧れていたことは事実で、その思い自体は大切にしておきたいからだ、、、。


とまあ、実に後味の悪い夢だが、ここに出てくる先輩みたいなタイプには、これまでの我が生きる軌跡上で何人か会ってきた。
明るく、親切で、有能。外見も悪くなく、人を惹きつける雰囲気を備えている。
が、彼ないし彼女の内側には、自分の才覚を活かすことが出来ない「不公平な」世への憎悪と、そんな中を生きていかねばならない理不尽さへの怒りが満ち満ちているのである。自分の人生を恨んでいるのだ。
だから、他人に対し、いっけん人当たりが良いようでも、よく観察したらどうしても上から目線になってしまっている。ニコニコと笑顔を浮かべていても、目つきや仕草、言葉の端々からはっきりわかる。
そりゃそうだ。自分の人生を認められない人間が、どうして他人の人生を尊重出来ようぞ?

知っているデモンストレーターの中にもこのタイプが一人いる。(もう極力近づかないようにしている)。
ということは、他の世界、例えば法曹や金融、医療、教育などの世界にもいるということね。

まあ、ある種、人生の反面教師になってくれているから、その意味では花を手向けても損はないわけだけれど。