脅迫めいたセールストークで無理強いしてはダメ

かれこれ10年以上も前の出来事だから、もう時効か。
とあるシニア向けのSNSのグループ内で知り合い、「友だち」になった人に、自らが所属する健康団体のセミナーに誘われた。
「ためになる話がたくさん聞けますよ。お土産もあります」。

私は、当時は現在よりはずっと深刻な状況をかかえ、1円でも多く稼ぐべく、びっしりと仕事に入っていた日々を過ごしていたため、正直、休日はゆっくりしていたかった。
それを伝えたところ、
「私がやっている健康法を試すと、疲れを知らない身体になりますよ。私など、先だっては大阪から東京に行って二日間眠らずに仕事をしましたが、何ともなかったですよ」
と返ってきた。

釈然としないものを感じたところに、
「あなたは本当に健康になりまたいんですか? 私たちの健康法をしなかったら病気になりますよ。寝たきりになってもいいんですか?」
ときた。
今度こそぶち切れた。
失礼な言い方にも程があると、即座にそのSNSグループを抜け、彼女とも友だち解除した。

後にわかった。彼女、とある悪質なネットワークビジネスにかかわっていたのだ。
私はカモにされかかったわけね。

非常に残念なことに、私たちデモンストレーターの中にも、たまさかながら、こういう「悪質な」(わざわざ「」をしたのは、ネットワークビジネスの中にもいろいろあると思うので。あまり知らないけれど、すべてが悪質なわけでもなかろう)ネットワークビジネスの販売員と同じようなやり方で売り上げてくる人がいる。
親友が数年前にこのタイプのデモンストレーターにつかまり、非常に怒っていた。

「体質的に便秘症なので悩んでいたのは確かなんだけれど、その時にドラッグストアでデモしていたおばさんが勧めたお腹にいいとされる健康飲料、いくら品質が良くてもちょっと購入をためらう値段だったのよ。そもそも、毎朝子どもと一緒にヤクルトも飲み、ヨーグルトも食べているし。そしたらね、甘いヤクルトなんかとか、砂糖が入ったヨーグルトなんかとか、商品を中傷してきたわけ。そんなん効果ありませんよ、私が今薦めているこの飲料でこそ便秘が解消されますって、そりゃ強引に。ムカーッとしたよ。まるで、毎朝ヤクルトを飲みヨーグルトを食べているこちらを否定されたみたいで。もちろんおばさんが薦めた商品は買わなかったし、それを出している会社の商品も、以後いっさい買っていない。イヤラシイよね、ライバル会社の商品の悪口を堂々と口にするなんて」。

人の身体は、百人いれば百人ともに違う。Aの健康食品や健康法がBさんには効果があってもCさんにはさっぱりというケースは、珍しくない。
このことをかんがえれば、デモンストレーションして販売する側は、「こういうのがありますよ」と、商品の特徴と期待されるであろう効能を的確に説明した上で、「よろしければ一度試してみてもよいのではないでしょうか?」と、あくまで提案するのみにとどめるべきである。
選ぶのは、お客様。脅迫めいたセールストークを用いて無理強いしてはいけない。