売上増はお客様に気分良くなってもらうことから始まる2~カンボジア旅行の思い出

近畿圏内の小都市にあるドラッグストアで栄養ドリンクをデモしていた時のこと。
試飲されたお客様の一人の日本語に微かな違和感を覚えた私は、思い切って尋ねた。
「お客さん、失礼ですが、どこの国から日本に来たのですか?」
カンボジアです」
カンボジア! あらぁ、私、行きましたよ。4年前」
お客様の顔がパッと輝き、ドリンクを口に含ませる手が止まった。
「そうなんですか。カンボジアのどちらへ?」
シェムリアップアンコールワットとアンコールトムを見に行きました」
「他のところは?」
トンレサップ湖とベンメリア。どこもとても良かった」
「僕の家はプノンペンにあります」
お客様は言った。
プノンペンカンボジアの首都です。プノンペンもいいところですよ。またぜひカンボジアに来て下さい。今度はプノンペンを観て下さい」。

思い出すねえ、、、ベトナムからカンボジアに旅した、2014年の1月。
4泊5日のうち、カンボジアでは2泊。その短い日程の中で、上にあげた地を回ったのだからかなりの強行軍だったのだけれど、これには理由があった。

時空を超えて存在し続けるアンコールワールド。その雄大さに触れ、ヘルシーそのもののカンボジア料理と地ビールをいただいて(真冬に訪れたのにカンボジアでは35度。ビールがとても美味しかった)、すっかりハイテンションになっている我々日本人観光グループに向かい、ガイドのお兄さんはパンフレットを広げながら、さかんに所定のコース以外の観光オプション追加を奨励したものだ。
「また行きたいところでも、時間やその他の都合もあって、なかなか思い通りにはいかないのが旅行です。今度はいつになるかわからないのなら、皆さん、この際は欲張ってなるべく多くまわっておきませんか?」

お兄さんのセリフに、真っ先に引っかかった(?)のが、海外旅行豊富な他の参加者(食事中に話をしていてわかった)とは異なり、ざっと10年間の耐久生活を抜け出したばかりの我が家。
ホンマ、国内外を問わず、旅行など夢のまた夢。今後もわからない。ならば、お兄さんが責任を持って案内してくれると言うし、オプション代金はカード決済も出来るとの話なので、誘いに乗ってみようではないかと思ったのだ。
「もしかすると、カンボジアに来るの、今回が最初で最後かも知れない。少しでも多くカンボジアを見ておこう!」。

引っかかった我が家につられたのか、他の観光客たちもオプション参加に次々と手を上げた。
かくして、ガイドのお兄さん、旅行会社の増収に大きく貢献。お兄さん自身の歩合もたくさんついたことだろう。

帰国して、確かに複数のオプション参加料金のカード支払いは楽ではなかったが、後悔はしていない。
お兄さんは正しかった。
2度目の旅行は、出来そうで、なかなか出来ない。
やはり、あの時、カードを使ってでも方々に足を伸ばしてよかった。
「よく、誘ってくれた」
と、夫と共に、未だお兄さんに感謝している。

こういう「強引さ」はいいねえ。
歩合がついたお兄さんもハッピー。思い出作りが出来た私たちもハッピー。

ちなみに。
全くの個人旅行だったハワイと韓国を除き、他は全部が現地でのガイド付きだったのだけれど、こんなに「コース以外のオプションもどうですか? せっかくの機会だから、、、。現金でなくてもオッケーですよ」と、熱心にセールスしたガイドは、お兄さんだけだよ、今のところ。

お兄さん、どうしているかな?
私の予想では、きっと独立して観光会社を設立しているか、その準備をすすめているかと。
「非常に貧しい農家に生まれ育ち、10歳を超えるまで靴を履いたことがなかった。この生活から抜け出すために、まず英語をマスターしてガイドになり、次に日本語をマスター。今は韓国語を勉強している」。

お兄さん、ガッツあるよ。
もし今度カンボジアを訪れたら、またガイドして、またバンバンと別オプションをすすめてね。
いくらでも引っかからせていただきます。
あなたみたいな人からは、こちらもパワーをもらっているのだ。