ひとりよがり。いいねえ。

我々が時おり噂の種にする人間のタイプに、「ひとりよがりな人」というのがある。
「あの人、なんかやりにくいね」
「うん。すぐ自分の世界を作ってしまうし」
「ひとりよがりなんだよね」
と、こんな感じで、仲間同士ヒソヒソ言い合う。
そうなのだ。ひとりよがりは、一般には、あまり良くないイメージとして認識されている。

そこを、頭を空っぽにして、もう一度よく考えて欲しい。
ひとりよがりって、本当に悪いことなのだろうか。
そんなに他人に目くじらを立たれないといけないことなのだろうか。
むしろ、最初はひとりよがりでないと生まれないものは、実はとても多いと思わない?

例えば、芸術は、間違いなく出発点はひとりよがりだ。絵画にしろ音楽にしろ文学にしろ舞踏にしろ、まずは自分自身の世界を確立しないことには、「その人の作品」にならない。さらに、確立されたその世界を耽溺せんばかりに「心から愛する」ことも必須条件。
この一連の行為がひとりよがりでなくて何であろう。

先の記事で書いた、川柳好きのおばあさんにしても、ひとりよがりの極み。
川柳をひねり、そこに浸ることで、完璧なまでに自分の世界を持ち、悪い言い方をすれば「1人イイ気持ち」になっている。
その至上の幸福感の前には、下流も貧困も孤独も意味を持たない。
「私は私」。
これだけが、少なくとも彼女の意識の上では真実。

これでいいのだと思う。
人は自分以外の者の言動に対しては何とでも言える。
つまり、人は他人のことには勝手に言いたい放題のくせに、その言いたい放題の人の諸々の結果には責任を持たない。

ひとりよがりでエエやない。
万々歳やない。

ただ、、、願わくば、何かのきっかけで、ひとりよがりが、その包する世界と別の世界とクロスする結果になったら、嬉しいねえ、、、。

ここに、ひとりよがりがマイナスイメージから脱却する素因が含まれているよ。