H社の仕事を仲介してくれたエージェンシーから、こんな電話がかかってきたことがある。
「同じ店舗、同じ価格、同じ商品、同じ時間帯なのに、あなたとあなたの後で現場に入られた方
とでは、売上に大きく差がありまして……。あなたが冷凍ハンバーグを100以上販売したのに、
次の方は十数個。何かあるんでしょうか?」
聞けば、私の次に現場に入った人は、店の指示で試食調理室でハンバーグをボイルし、カット
して皿に並べ、売場に運んだと言う。
そりゃ、売れんわな。
ハンバーグでなくても、鍋でもうどんでも、調理を要する商品は売場で作らないとダメ。
試食販売は別名デモンストレーションの言葉が示すとおり、一種の見せ物であり、祭りだから
だ。早い話が、ショー、イベントなのよ。
だから、臨場感は不可欠。
それに、匂いがもたらす消費者心理への効果は大きい。
試食調理室で調理したら、この部分がごっそり抜けてしまう。
プラス、タイムロス。
売場と試食調理室を往復する時間は、どうして、バカにならない。
売場にいれば継続的に試食が出せるから、より多くの方に味を知ってもらうことが可能で、そ
れが売上に結びつくのだが。
とは言え、ライフの一部の店舗などでは売場で火を使わせてくれない。
私もライフの某店で紀文の豆乳鍋をすることになり、指示通り、バックで作って売場に運んだ
ことがあるが、悲しいほど売れなかったね。
紀文のあの商品は、美味しいので、試食したらお買い上げ下さることが多いのだけれど。
メーカーもメーカー。
ここいらあたりの事情がわかっていれば、何もわざわざマネキンに尋ねてこなくてもよいだろ
うに。