もう開き直りだよ。
若い頃に人生設計をええ加減にしていたおかげで、プラス、仮病を使ってまで公の金を受け取るほどの厚かましさにも恵まれていないおかげで、どのみち、死ぬまで働かないといけない。
だったら、刹那的と言われようが、あまり長いスパンではものをかんがえず、その日その日で小さな楽しみを見つけ、面白がったほうがいい。
そこで、12月1日と2日の和歌山市での仕事も、観光を兼ねることとした。
ガッタンゴットン。ガッタンゴットン。二十分ほど揺られて、貴志駅に。
構内は、中国からの若い観光客でいっぱい。
「おいおい。中国と日本はいま仲が悪いんじゃないの?」
と、首をかしげるまもなく、子音の効いた中国語が飛びかい、あふれる。
皆、たま駅長のお姿を一目でも拝見したい気持ちは同じで、写真を撮る順番を巡り、話し合う。
不思議。日本人の私に話しかける言葉は、片言の日本語ではなく、英語。
ん? どうしてぇ? 日本に観光に来るのなら、ちょっとでも日本語を覚えてこなかったの?
それはともかく、凛々しくも愛らしいたま駅長は、残念ながら、ずっと眠ったままだった。
駅長も14歳とご高齢。ひごと、駅長としての激務が、きつく感じられるようになっているのだろう。
売店に寄り、えのお顔とお尻尾をデザインしたクッキーを買った。
味は、どちらかというと、尻尾くのほうがよかったね。