立替金2

 さてさて。いよいよ試食販売における立替金について。

 このことを話題にしてよいものかどうか、ずいぶん迷った。
 私も含め、大半の試食販売従事者イコールマネキンが、仲間内では
「ほんまに、かなんなあ」
 と愚痴りつつ、表向き、特に仕事をまわしてくれるエージェンシーに
対してはそういうことは露ほども出さないからである。
 なぜなら、立替金の負担を口にするや
「あ、そう。そんなに大変な思いをしてまで仕事をしていただかなくて
結構。大変ではない他の人にまわします。マネキンはいくらでもいるん
ですからねえ」
 と、返されるのではないかという危惧を、常に抱いているからである。

 一般にあまり知られていないことだが、例えば、新商品のドレッシン
グをデモする場合、そのドレッシングはもちろん、デモメニューである
サラダなどを作る場合に必要な材料費は、当面、すべてマネキンの立て
替えである。
 立替金だから、当然、返ってくる。
 だが、それは、おおよそ一ヶ月後。エージェンシーの締め日の関係に
よっては、二ヶ月後になる。
 日々、やりくりに追われる身にはきつい。 
 
 それでも、ドレッシングデモのためのサラダならまだいい。
 焼肉のタレを担当し、そのデモ用に肉を買い取る場合は、悲惨の一言。
 店や曜日、客数にもよるが、確実に一枚は福沢諭吉が立替金の名のも
と、消えてゆく。

 マネキンの大半は庶民クラスの主婦。
 お金に困っているから、何の特技や資格がなくてもスーパーや工場に
勤めるよりはこの仕事の方がお金になるかなと、就くケースが多い。
 なのに、いざとなれば、現場の最前線をになう私たち(一番弱い立場に
いる)が、当面の負担をかぶる。

 どうも納得がいかない。
 
 立替金の話題。まだ続きます。