はいつくばるだけでは

 さてさて、立替金パート3といきましょう。

 親しい仕事仲間が、ある時、焼肉のデモンストレーションで、国の援助を受けつつ経営再建中
のスーパーの某店におもむいたところ……店側に
「姫牛を買い取り、それを試食に、ばんばん提供せえ!」
 と言われたそうな。

 仲間は、一瞬、耳を疑った。
 だから、素直に尋ねた。
「えっ。えっ。あの姫牛を試食に出すんですか?」

 そりゃそうでしょうが。
 店や曜日にもよるが、試食に来る人の八割から九割は、冷やかし。
 と言うか、食べるだけ。
 
 失礼ながら、舌が肥えているわけでもない。
 味がわからない人がほとんど。

 そんな人を相手に、姫牛ですと?

 もっとも、店にすれば、だからこそ「姫牛」なのだ。
 味がわかろうがわかるまいが、マネキンが「立て替え」として試食に出す肉を買ってくれる
なら、少なくともその日の売上は伸びる。
 これが、狙い。

 この「慣習」のため、どれだけ多くの現場従事者=マネキンが、時に私生活を犠牲にしてき
たことか。

 時は平成。
 かつてのように這いつくばるだけでは……ね!