いい仕事

 ま、いろいろあるけれど、この仕事、就いたのも何かの縁だし、がんばろうかな。

 手先が不器用なのは、生まれつきだろう。
 中学一年生の冬、家庭科で菊花カブの切り方のテストがあり、包丁がうまく使えない私は、家庭科
教師のエンマ帳に、「2」と書き込まれるのを、確かに見た。

 ああー、私は2なんやと、はっきりさとった。

 手先が不器用なのは、ずっと前から感じていた。
 それでも、料理には関心があった。
 そのきっかけは、ほとんどは、看護師の仕事と内職(和裁の仕立て)で超多忙ながらも
「子どもたちには手作りのものを」
 との意思のもと、奮闘してくれた亡母の存在があった。

 教員になった娘によると、現在の家庭科教育は違うらしい。
 包丁による切り方云々は大切だし、科学的にも意味のあることだけど、それよりはまず料理するこ
との楽しさを知ってもらい、その延長として、食育にも目覚めてもらう。
 こんなスタンスだとか。

 要は、美味しかったらええねん。
 かの菊花カブかて、切り方は下手でも、味がよかったら、ええやん。

 料理屋をしていた夫の身内に、ここ二年来、言われる。
「Machikoさん、料理、上手になったねえ」

 人に食べて頂き、批評して頂いたからだ。
 素麺ひとつでも、家族だけで食べるのと、赤の他人様に食べて頂くのとでは、麺をゆでる前の気
の持ち用からして、違う。

 立替金の件さえカバー出来たら、いい仕事だよ、これは。