虚像

ブロ友さんのコメント欄にも書いたのだが、女性受けするルックスでも知られた、ロックシンガーの
ボン・ジョヴィは、このところ頭髪が薄くなった(そりゃ歳だからね。五十歳くらい?)。
 これから、彼はどうするのだろう? 自然に任せてさらけ出すのか、反対に隠す方向に向かうのか。
 ロックミュージシャンにとっては見てくれもアピールポイントの一つだけに、ファンとしては気になるところ。

 You-tubeの動画で、主に七十年代八十年代に活躍した内外のミュージシャンの最近の画像を診てい
ると、「あれっ」と感じることが、よくある。
 体型のたるみや顔面のシワ、眉の濃さに比べ、頭髪だけが年齢にそぐわないのだ。異様に若々しい。
 やや露骨な表現をするなら、出っ張ったオナカや尖ってひからびた顔、印象が弱まった眉毛は、まさしく「じーさん」であり「おっさん」なのに、アタマだけが「おにいさん」なんだね。人気絶頂だった四十年前三十年前とほとんど変わらない。六十年代から活躍し、その名を口にすれば日本人でも八割から九割の人は知っているであろう某大物ミュージシャンからして、そうだ。
 これって、もしかして?

「ウィッグなんかでごまかしたりせず、いっそ剃っちゃえばいいのにね」
 親友は言う。
「あの人なら、スキンヘッドにしたからって、CDの売上が落ちるとか、そんなことはないと思う。松
山千春なんか、さっぱりしたもの。あんな方が堂々として、好感が持てる」
 さらに
ユル・ブリンナーは、毛が一本もなかったけれど、カッコ良かったやん」

 まあねえ。
 もっとも、ブリンナー氏は、たぐいまれなる「美頭」の持ち主。出世作王様と私」の映像を、正確には同映画のなかの彼のスキンヘッドを、今一度よーく見て欲しい。
 ゆで卵みたいにキレイな頭の形をしているでしょう?
 あんな美頭の人、滅多にいないよ。私が記憶する限り、他には、明智小五郎を世に問うた推理作家の
江戸川乱歩(故人)くらいのものだ。
 ああいうタイプの頭なら、剃りあけてもサマになるだろう。
 そうでなければ、やはり隠してしまった方がマルかも知れない。

 金も名声もうんざりするほど手に入れてしまったであろうスターが、黄色い声の飛び交うステージを降りて戻った楽屋では、ウィッグを外し、少なくなった毛を手櫛ですいて一息ついている姿を思い浮かべると、妙に親しみが沸いてくる。その際、彼(彼女)の目には、恐らく瞼下の深い窪みや口元にくっき
りと刻まれた線をもうつっているはずだ。
 
 人は誰しも老いる。肉体の上に、それは容赦なくあらわれる。時の流れは万人に平等なのだ。
 それでも、虚像を追い続け、演じることが出来る間は、人は少なくとも精神(こころ)の上では老いない。「自分はまだまだいける。未知のことにも挑戦出来る」。こんな気になってくる。

 虚像。悪くない。どんどん演じたらよい。
 欲を言うなら、新たな虚像を生み出し、演ずることが出来たら、もっと楽しくなる。