近商ストア大久保店にて、カキフライのデモを担当した。
何、水揚げしたばかりの養殖牡蠣(広島産)に衣をつけて冷凍したものを揚げ、半分に切って試食していただくだけの簡単な仕事。
今回は、揚げる作業を店の方でしてくれたから、さらに楽だった。
それにしても感心してしまった。
衣のさっくり感。ふわっと感。家庭ではなかなかこうはいかない。
味を知るため、仕事を開始する前に自分でも一つ食べてみたが、口に含むや、じゅわーっと牡蠣の旨味がひろがり、さすが金をとるだけのことはあると、あらためて認めた。
料理本には、家庭で牡蠣フライをフワリと揚げるコツは、
「鍋に酒を少量煮立て、牡蠣を炒り煮してから、180度の油でさっとね!」
と書いてあったけれど。
よく売れた。
お客様の大半はおっしゃる。
「揚げ物は好きなんや。チャッチャッとキャベツを千切りして添えて、プチトマトでも飾ったら、それ
でメインデニッシュになるしな。酒のツマミにもええし。でも、後片付けがなあ。あの手間を考えたら揚げたてを買った方が楽」
そうなのだ。
プラス、一人暮らしや老夫婦二人だけの所帯も増えている。
じいちゃんとばあちゃんだけの食卓を飾る揚げ物なら、わざわざ専用鍋を引っぱり出してまでと、私
も思う。
反面、あの楽しみを人に完全に任せてしまってよいのかとも思う。
透き通った油の中に衣をつけた具材を入れ、歯切れの良い音と共に一度は沈んだ白い具材が色を変えて再浮上してきた時の、ドキドキ感。
たちのぼるオイリーな香り。
揚げ物は、食する前からオイシイのだ。
ネックが調理後の処理の面倒さにあるのなら、そちらをクリアすればよい。少しでも効率よく油料理の後始末をする方法。きっとあるはずだ。
揚げ物。
自己(具材)の持ち味をいかしつつ、油の中でほどよく踊って、別の美味しさも取り込む。
外はカラリ。中はジンワリ。
音楽に例えたら、ボサノバといったところか?