人のフリみて何とやら

 12日と13日は、ジャスコ五条店で、マリンフードのチョコフォンデュのデモ。

 大きな声で言うのははばかれるが、ここは「試食がものすごく出る割にお客さんは買わない」ことで、京都ビッグスリーに入る店である。
 お客さんがせこい(ケチ)のではなく、試食慣れしているのだ。

 こんなところで、お菓子や肉や麺類など、いわゆる一般受けする商品を試食販売する者の大
変さは、恐らく体験者でないとわからない。
「それが仕事でしょうが」
 と切ってしまわれたら、正論だけに沈黙するしかないのだけれど、明らかに「食べるだけ」
が目的のお客さん(顔つきとこちらに近づいてくる態度でおおよその見当がつく)にも、立替金
の負担や売上プレッシャーを作り笑いの下に隠し、「どうぞどうぞ」と薦めなければならない
悔しさ、悲しさ、やるせなさ。

 同時に想うのだ、私たちも別の場所で無意識のうちに似たような行為をしているのではなか
ろうかと。
 昼休憩の時、バーゲンセール真っ最中のブティックを通りかかって、余計にその感を強くし
た。

 皆さん、バーゲン会場で服や小物を物色している人たちを、よーくよーく見て欲しい。
 ぎらつく眼、商品をあさる(そう! まさにあさるのだ!)ガサガサした動作、軽く身体にあて
てみて合わないとわかるやポンと放り投げる態度。
 どこか「食べ物にただでありつけてラッキー。こっちは客だもんね」と開き直って試食に群
がる人たちと、共通のものがある。
 さんざん試しておきながら、「いまいち気に入らない」と、最終的に買わない点も同じ(バーゲンの時期や種類にもよるだろうが、会場に足を運ぶお客さんの数と売上高は試食購買率とさ
ほど変わらないのではないかな)。

 こう頭ではわかりつつ、おしゃれな服なりバッグなりを通常より安く手に入れたいのは、時
代を通じて変わらない女心。
 バーゲンでは、無意識のうちに夢中になってしまうよね(私も含めて)。
 結果、商品を積んだワゴンの中はもちろん、ハンガーに吊るしたジャケットやスカートの類
いまでくしゃくしゃ。
 それを、イヤな顔ひとつせず、にこやかな笑と共に元に直しているのが、店員さんたちなの
だ。
 内心では、不快きわまりないだろうけれど。
「もっと丁寧に服をあつかってよ! 最初から冷やかしのつもりなら来ないで」
 こう叫んでいることだろう。

 人のフリみて何とやら。

 売る方も買う方も、お互いに思いやりを持ちたいところだ。