楽しいことは自分で作ろう

 ジャスコ五条店でのマリンフード「チョコフォンデュ」のデモのレポートをもう少し続ける。

 土曜日はよく売れたのに、日曜日は午前中さっぱり。
 午後から持ち直した。
 原因の一つに、同店で売られていた某商品のボトルに、こう書かれていた文句を目にしたこ
とによる。

 「楽しいことは自分で作ろう」

 これ、これですよ。
 マネキンというのは販売業界の底辺に属する職業だから、各方面から理不尽な扱いを受ける
ケースが数知れない。
 マネキン同士の対立や見栄の張り合い、告げ口もある(私があまり同業者にメールアドレス
などを教えない理由がここにある。真に親しくしているマネキンは二人だが、これでじゅうぶ
ん)。
 いちいち気にしていたら、心の病気になってしまうっつうの。
 実際、不眠症やウツ症状に悩むマネキンはかなりいる。

 私も、本来は高確率でメランコリーに属する気質の持ち主。少なくとも、さっぱり系ではな
い。
 それが、この仕事に就いて七年目を迎えた昨年頃から、良い意味で忘れ上手になり、脳が単
細胞化したのか、落ち込んでも昼休憩に美味しいパスタを食べたとかセンスのいいスカーフを
見かけたとか可愛らしいポストカードを買ったとか、こんな些細なことで気持ちがリセットし、高揚するようになった。
 楽しいことを作るのは、今や、得意中の得意と言ってよい。

 今回の「楽しいこと」は、造花。
 ハンカチを忘れていったことに気づき、昼休憩の時に入った店で、二個350円で売られていたマーガレットをかたどった髪飾りを見つけた。
 目にした瞬間
「これを造花代わりにデモテーブルに飾ったらキレイだろうな」
 とひらめいた。
 さっそく購入して実行。
 華やぎを添えたデモテーブルは、バレンタインデーを前にたいそう目を引き、見ているだけ
で楽しくなって、こちらも浮き浮きしてきた。
 売上が急カーブを描いたことは、言うまでもない。
 きっと、テーブルの見た目の派手さと共に、デモをする私自身の浮き浮きモードが、お客さ
んに伝播したのだろう。