掃除が苦手な人はいない。正しいやり方と手順を知らないだけ。

清掃業についておられる方々を、私は心より尊敬するものである。
理由は単純明解。私自身は絶対に出来ない仕事なので。
とにかく、物心つく頃から掃除や片付けが大の苦手で、親にも地域の大人にも教師にも上級生にも、社会に出てからは上司やお局様にも、「どうして、きちんとしないの? どうして、きれいに出来ないの?」と怒られっ放しの有様で、還暦を過ぎた今もなお、やはり掃除も片付けも苦手だからだ。

そんな私なのに、何と、仕事先で知り合った清掃会社の人に、
「宣伝販売の仕事は、平日はけっこう空きがあるやろ? その時にうちの会社の仕事せえへん? 時給エエし、二時間からでもオッケーやで。家にいても一銭にもならんがな」
とスカウトされた。
今年の連休明けのこと。

「片付けも含め、掃除は苦手なんです」
と断ると、
「大丈夫。大丈夫。ウチかてせやったから。でも、親戚に義理を立ててこの仕事を始めて、知ったよ。掃除が苦手な人はいない。ただ、掃除の正しいやり方と手順を知らないだけなんやと。だから、そこのところが解決出来たら、誰でも掃除上手になる。その点、うちの会社はしっかりとしたマニュアルがあるから、心配ない。見てみ。ウチ、今では新しく入ってきた子を教えるトレーナーやがな」。

彼女によると、掃除が苦手な人は、例えば汚れをみつけたら単に汚れをとることばかりにとらわれる人だとか。
実際には、「汚れ」と一口に言ってもいろいろな種類があり、処置の仕方も種類別に異なる。
それを知らず、やみくもに汚れをとろうとしても、その汚れには向かないやり方でしているのだから、とうぜん効果はなく、そこで掃除が嫌になってしまうのだそうだ。
ああ、わかるわあ。

汚れを取ろうとする前に、まず汚れを見つめ、汚れの種類やら程度やらを判断し、汚れをとる最も良い方法を選ぶ。
これが大切なのね。
いや、待てよ。このプロセス、ビジネスでも同じようなものじゃないかな、、、「現実直視」「判断を下す」「適切な対応」と。

また、効率を踏まえた手順も大事。
「掃除が苦手な人って、どこから手をつけていいかわからないと言う人が多いやろ? でも、最小限の手間で最大限の効果が得られる手順があるんや。もちろん、モップの動かし方一つにもな!」
なるほど、、、。

彼女は続ける。
「掃除が苦手な人は、こんな効率やら手順やら考えもしないで掃除をするから、時間ばかりかかってちっともきれいにならない。ますます掃除が嫌になる」。
そう、そうなんですよ!

彼女は、私が新人教育をした限りでは、皆、掃除をした場所がきれいになったと実感すると一様にスキルが増していくと話す。
「そりゃ、嬉しいよ。自分がやったことがはっきりカタチとなって目の前に現れるんやもん。で、その嬉しいを積み重ねていくと、掃除を始めるとカラダの方で勝手に掃除モードに入ってくれるようになる。そうなったらシメたもの!」

仕事での掃除方法を家の掃除にも応用したら、家もすっきりして家族仲も良くなり、人がたくさん訪ねてきてくれるようになって、いいことずくめ。
「掃除が苦手という負い目がなくなって、気持ちも優しくなるし、お金も貯まる。ウチ、この仕事で稼いだ金で去年インド旅行したで。本場のアーユルヴェーダを体験できるツァーがあったんや」。

ふうむ、、、。
聞いていた私は目からウロコが落ちた気分だった。
「掃除が苦手な人はいない。掃除の正しいやり方と手順を知らないだけ」か、、、。

その夜から、おいおい、ネットで「プロの掃除人のやり方」を検索する日が始まった。(続く)