キレる老人

この仕事について15年目。いつのまにか還暦を過ぎ、嫌でも「老い」を身近に、さらに具体的に感じるようになった。
そのせいか。
最近、キレる、あるいはキレる寸前にいる老人が気になるようになった。
人生山あり谷あり。良いも悪いも、相応の体験を経てきているはずの彼らを、そこまで荒れさせるのは何か?

一口に「キレる老人」と言っても、さまざまな型(タイプ)が存在する。

まず、怒りエネルギーが主体の爆発型。
先だって仕事をした某ローカルスーパーで出くわした、「(応対した従業員の)態度が悪い」と、とつぜん大声をあげ、あまつさえその従業員を蹴りつけた老人は、これに当てはまるだろう。
彼はその後、「事情をよく聞きましょう」と、店長室に案内されたのだが、そこでも暴言を吐き、机や椅子を威嚇するように叩いたり踏み鳴らしたりしたため、店長はついに警察を呼んだそうな。

次に、被害者意識が強い泣き型。
何年か前、「店の者どもが私を年寄り扱いした」と泣き叫びながら店の棚に置いている商品を片端からはたき落としているおばあさんがいたが、きっとこの型ね。

三に、些細なことを取り上げ、人生の先輩風を吹かして延々と責め立てる説教型。
北近畿の大型スーパーのレジで、「一万円札に対するお釣りを千円札だけで渡す時、なぜ一言、細かくて申し訳ございません、と付け加えないのか? 客に対する気遣いが欠けている。いったい、この頃の上司は若いもんをどう教育しているのか?」と、長々とわめいていた瘤(こぶ)取り爺さんならぬ小太りじいさんは、これの典型かも。

四に、およそ実現不可能なことを押し通そうとして、クドクド、ネチネチと食らいつく理不尽型。
スーパーではないけれど、郵便局で、ある証明書がないばかりに提出しようとした書類を断られた八十代とおぼしき男性が、局長相手に
「ワシはトシとってるよってに、ここまで歩いて来るのも大変なんや。あんた、局長やろ? あんたの権限で何とかせえ!」
としつこく詰め寄っていた。
彼はこの理不尽型に入るだろう。

繰り返す。
彼らは、人生の千秋楽間近にきて、なぜキレるのか?
私なりに考えてみた。

次回に。