大切なのは、語学力ではなく、コミュニケーション力。

水曜日。

1日中、雨がダラダラと降り続いたこともあってか、現場として立った店のお客様数が極端に少なかった日の午後。
観光客とおぼしき白人の団体が店に入ってきた。

彼らは、店内の寿司売場で少なからぬ数のパック寿司を買い(ありがとうございます)、でも何を思ったか、近くでデモしていた私に話しかけてきた。

早口の英語。
いや、彼らにすれば自然なスピードなのだろう。

私は、彼らの身振り手振りから判断し、
「お箸?」
と、日本語で問うた。

「ノー、ノー」。
腹の突き出た、鼻高のオッさんオバはんたちが答える。

ならばと
「フォーク?」
と聞いたら、またもや
「ノー、ノー」。
そして、相変わらずの早口英語。

そのうち、金髪の鼻高ふっくらし過ぎオバはんは、
「やってられないわね」
の、あの表情とポーズ。
「日本人は英語、わからないのよね」。

カチンときたね。
お前ら、英語は母国語だろうが。
こちらはそうじゃない。

英語が通じて当たり前。通じないのがおかしい。
悪意はなく、彼ら彼女たち、そう信じているのだ。

痺れを切らしたのか、団体の1人のオッさん、携帯でサイトを検索し、写真を見せた。

なーんだ。お箸じゃないの。
だから、最初に聞いたでしょうが。
「お箸?」
と。
それを、
「ノー、ノー」
なんて答えるから、こちらも
「ん? ん?」
となるのだ。

まあ、向こうではHashiで、こちらが英語を聞き取れないのと同様、オッさんオバはんたちも、日本語の「お箸」が聞き取れなかったのだろうが。

私は、お箸がある場所を聞くべく、サービス・カウンターに走ることとした。
サービスカウンターに足を向けかけたその時、ふと気が付き、くだんのオッさんオバはんたちに、
「プリーズ・ウェイト」
と。

その時、彼らの表情が変わったのだ。

サービスカウンターで、
「寿司を買われた外人さんが、箸はどこにあるのと聞いてはりますが?」
と尋ねたら、
「レジでお渡ししますよ」
との返事。

そこで、足早に鼻高オッさんオバはんたちが待っている場所に戻り、
「ユー・キャン・ゲット・オハシ・アト・レジ」と伝えたら、またまた彼らの表情が変わった。

フン。
こっちは、15年以上、この仕事をしている。
国籍やら言語やら、関係なく、お客様はお客様として接してきたから、わかっているわさ。

「本当に大切なのは、 語学力ではなく、コミュニケーション力」
だと。

写真は、京都の某神社で写した梅。

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