移動の辛さはプロ意識で回避

 腰痛と膝痛が激化し、注意力も散漫となっていたのか。
 
 やばいっ!
 一昨日の朝、ホームベーカリーを使って焼き上がったばかりの食パンをパン
ナイフで切っていたろ、左手の薬指の爪とその周辺を切ってしまった。
 幸い深手ではないので、数日で完治しそうだし、明日からの三日間の仕事は
どこも身だしなみがやかましくない店なので何とかなりそうだが……。
 
 体調管理や危機回避も仕事のうちと考えれば、完全にプロ失格。仕事への意
識が低下している証拠である。

 結局はプロ意識なのよね。
 仕事の問題は仕事で解決をとおっしゃる経済評論家がいるが、その通り。
 自分はプロなのだとあらためて認識すれば、つらい移動も
「仕事上必要なことなのだから」
 と、さほど苦痛に感じることはないし、それでもまだ辛ければ、移動という
行為自体から、何とかして「楽しみ」を引き出すよう、努力する。
 その努力を、また楽しむのだ。

 例えば、
「同じ京都でもこのあたりにくると木の生え方が違うなあ。横には広がらず、
ひたすら真っ直ぐ真っ直ぐや」
 と、こんな些細な事柄でもよい。それまで過ごした「日常」にはない「変
化」を見つけ、
「なぜだろう」
 と観察力と探究心をフル活用する。
 それなりに、洞察力と想像力も働かせる。

 これって、大好きなミステリーを読む楽しみと酷似しているのね。

 あと、ちょっとした「自分へのご褒美」を用意する。
 辛い移動を伴う仕事が終った後の、一杯のコーヒー。一杯のビール。
 甘い香りの入浴剤。肌触りのよいコットン。スリリングなDVD。
 それに接した時に感じるであろうプラス感情をオーバーなまでに推察し、
脳の隅々にまで拡散して、意識に浸透させることで、一種のナリきり状態に
自分を持っていく。 
 ここまで到達すると、移動は精神的にも肉体的にも辛さを伴う快感にすら
なりうる(なんて、私、決してMじゃないよ)。

 とどのつまりは、自尊心。
 自分はプロだという。

 プロは仕事の愚痴はこぼしてはいけない。

 ……なんて、やっぱりこぼしちゃうのだけれど。