接客業って、時に、辛いよなあ

 五日連続勤務の後の四日連続オフの二日目。
 岡山は瀬戸のホームに入っている父親を訪ねてきた。

 実は、数日前より、あることで頭が一杯の私。
 今日も、父と面談している最中にもそのことが頭を掠め、ついつい意識が
飛ぶことがあった。
 早い話、うわのそら。

 認知症が進行している父だが、子の異変に気づくのは、さすがと言うべき
か。

 心した。

 プライベートな悩みは、ごくごく内輪の者にしか悟られてはならない。
 それがばれてしまったのは、まだ私が役者に成り切れない、すなわち、
マネキンとして半人前な証拠。

 親が死の病に横たわっている時でもにっこり笑わないといけない商売だ
からね、マネキンは。
 つまり、役者にならないと務まらない仕事。
 
 数年前の亡母の死を思い出す。
 意識不明が一週間以上も続き、周囲に
「親が大変な時に仕事とは何事か」
 と責められつつも、抱えた借金を返済するために現場に立っていた。
 鳩マークの醍醐店で大○製薬のアミノ飲料を売っていた時、
「おばあちゃんが亡くなった」。
 この通知を受け取っても、本当は、床にうずくまって、わあっと叫んで
泣きたかったのに、笑顔を浮かべて販売しなければならなかったのだ。

 もっとも、ここいらは、皆、同じ。

 接客業って、時に、辛いよなあ。