風邪は万病のもと

 風邪は収束に向かってきた。
 今日が休みでよかったよ。

 今まで二度、喉から出血したことがある。
 あれは、突然やってくる。
 つい一時間前まで元気に普通に声が出せたのに、という感じ。
 
 最初に所属した派遣会社では
「代わりの人がいないので」
 と言われ、唾液に血の味がするのを我慢して、奈良は橿原のイオンに行った。
 仕事をしているうち、どんどん声はかすれ、出なくなった。

「おねえさん、だいじょうぶ?」
 と心配して下さったのは、まずお客さん。
 ついで、パートさん。
「あんた、無理や。はよ帰り。声聞いていたら、痛々しい」。
 パートさんがチーフに話してくれ、チーフが派遣会社に連絡してくれた。

 振り返るに、優しい人たちだった。
 マネキンにきつい店では、ボロカスに罵られ、強制退店となるんだよ。

 ほんま、冷や汗が出る。
「あんた、しんどいのに、よう頑張っている」
 と、担当した豆腐を買ってくれたお客さんたち。
 この日、売上は上々だったのだ。

 その豆腐。捨てられた可能性が強い。
 病気を推して現場に立っていた私へのエールで買って下さったのだ。

 それにしても、早朝にすごい声で社長に
「こんな声になってしまって。代わりの人に行ってもらって下さい」
 と電話をかけたのに
「一応行って下さい。代わりの者を後で行かせます」
 と言われた。
 けっきょく代わりは来ず、派遣会社に電話したら
「代わりの人、いないんですよ」
 と、社長の妹に突き放すように返答された。

 こんなの、あかんわ。
 当日にハプニングがあることもたまにはあるのが世の常。
 だから、スッチーだって予備の者を待機させておくというじゃないの。

 とは言え、この会社ばかりではないのね、予備の者を置いていないのは。