もしかすると東京へ

 三月半ば、もしかすると東京に行くかも知れない。
 もしかすると、と前置きしているのは、この日を含める前後の数日、連続で仕事が入っていて、
派遣会社が代理を承知しないかも知れないから。
 実際、よほどのことがない限り、「プラベートより仕事」なのが、「常識」だからね、日本では。
 
 1999年からメール交換してきたロックシンガーがね、その日、コンサートを開くの。
 一度、彼女が大阪公演に来た時、会う約束をしていたんだけれど、腰痛で座っているのも苦しく
なり、流れた。
 あれから、11年。
 面識はないし、時々メールは途切れたけれど、交流は続いている。

 我家にいろいろあったように、彼女にも、人生の逆風が、これでもかこれでもかと、何度も吹い
た。
 そして、今。
 ロックとは関係のない仕事に就きながらも、
「いつの日か必ずステージに立ちたい」
 と、私へのメールに書いてきた夢が実現しようとしている。

 生きていたらね、そりゃ、笑っていられない日もあるわな。
 ひがんでしまう日もあるわな。
 やはり、ネット友の一人が、私に
「人間は自分以外の人間のことでは評論家になりがち」
 と語っていたが、本当にそうだと感じる。
 
 人間、他人のことなら、好き放題に言えるのだ。
 私がそうだったように、彼女も渦中のただ中にいた頃は、周りの無神経な視線や言動に苦しんだ
と想う。
 そして、本当に辛いのは、病気とかお金とか、そういう実際的な問題よりも、そちらの方である。
 
 病気や経済の問題も辛いが、理解ある人たちに囲まれ、有形無形の励ましを受け、自分の気持が
かたまっていたら、何とか耐えられる。
 そう。
 一番の敵は「孤独」。
 人間は、これには負けてしまう。

 彼女とは、いちいち言葉に出さずとも、ここいらあたりの感情の微妙な動きがわかりあえる、数
少ない「人生の戦友」である。

 ちなみに、彼女と知り合ったきっかけは、彼女がネットの某サイトにメルフレ募集の広告を出し
ていて、私がそれにメールを出したのがきっかけ。
 彼女が好きとするミュージシャンがあまりに私の好みにあっていたので、絶対に話があうと直感
した。
 ネットとは、時に、粋なはからいをしてくれる。

 さて。
 派遣会社と交渉しよう。
がそれに