ああいう女

さあて!

 まずは日曜日の現場の報告から書きましょ。

 店名は明かさない。
 とにかく大阪北部にある、関西では名を知られた某大型チェーンスーパーの一店舗。

 ここの加工食の責任者をつとめるA(仮名。一応Aとしておく。本当のイニシャルを明記すると、イニ
シャルだけでも「ああ、あいつやな」と、同業者やメーカー営業にわかってしまう。それくらい有名)
という女。
 京都市内の我家に近い同系列の某店にいた時から、底知れぬイケズ(意地悪)さで、我々を泣かせてき
た。私も、実は、以前に登録していた派遣会社に在籍していた頃、彼女に重箱の隅をつつくようなこと
を言われ、派遣会社に
「二度とあの店の仕事をまわさないで下さい」
 と頼んだことがある。

 噂によると、彼女、この店にいた時に職場恋愛をして結婚したため、日曜日に私が行った店に移動
したらしい。
 一挙一動がテキパキしていて、仕事の指示を与える口調も明解な彼女。
 やり手はやり手なのだろうが、キツいんだわー。
 部下や私たちに対する口調も、もう少し柔らかくならないのかね。

 それに、何やねん。
 我々を見下したような、あの視線と表情。
「あんたらなんか、しょせん、その日稼ぎの試食販売のおばはんやん」
 との意図が、アーモンド型の美しいカーブを描いた眼の奥に見え見え。
 当然、仕事が終わっても
「ご苦労様」
 の一言もなし。

 容貌だけを取り上げれば「美人」の部類に入るだけに、余計にその酷薄さが染み入る。

 同日も、某調味料を宣伝販売した私に、商品からおよそ離れた位置でデモしろと言う。
「デモ場所に商品は持って来ないで。お客様に味をみて頂き、商品はあちらにありますと、指で指示
して下さい」
 ちょっと!
 そんなのでは、売れないよ。

 でも、一言でも返そうものならどうなるかはわかっているので、従うしかない。
 例え売上ゼロになろうとも。

 結果は、完売。
 トリップによる笑顔効果だ。
 ニコニコしていたら、人も福も寄ってくるのよ。

 帰路のバスの中でいっしょになった別の派遣会社のおばちゃんがAをおこっていた。
「まだ若いくせにツンツンして、クソ生意気な女やわ」。

 まあね。
 とは言え、あの性格は、しゃーないわ。
 こちらがどうしようにもならん。
 あんな女やと割り切って接していかないと。

 ついでに。
 かくも評判の悪い彼女を伴侶に選んだ旦那はどんな男なのだろうかと、少し興味がある。
 いや。
 もしかすると、旦那には優しいのかな?

 ともあれ、ああいう女なのだ。
 こちらが怒ったり、気に病んだりするだけ、あほらしい。