売上数がわからないほど売れたのはよいけれど、立替金も大したもの。
仕事が終わり、残った試飲用のジュースは、いつも通り、お店の方々にあげてきた。
こんな小さなことでも、ものすごく喜ばれるのよね。だって、セール日の品だしは、そりゃ大変。
重い台車を何度も何度もひいて、腰はがたがた、腕はがちがちになる。
一杯のジュースがどんなに疲れた心身を癒してくれることか。
少し前、休憩時間に、お客さんらしい若いお母さんと話したことがある。
抱いていた赤ちゃんは、まだ生後半年も経っていないか。
その子をあやしながら、お母さんは私に言った。
「この子が笑ってくれるのがとても嬉しい。この子の喜ぶ顔、もっと見たい」
ああ! これぞ、愛の極み。
親子の間でなくても、男女の仲でも、そうよね。相手が嬉しがって、にこにこと幸せそうにして
くれる。この単純なことに勝る愛の返答があろうか。
これを、もっと広い範囲に広げられたら、立替金やら何やらも気にならなくなるだろう。
相手を喜ばす。
相乗効果でこちらも嬉しくなる。
どちらもハッピー。
もっとも、なかなかこういう心境になれないんだな。
それこそ、宗教家の世界に入ってしまうよね。