現場に立ったことのないエージェンシー

サティ草津店における日水のお魚ソーセージのデモは大成功。完売だった。

 やっぱり私はこの仕事が好きなのだ。
 だから、メインにしている派遣会社からあらたに入ってきた仕事の依頼書の特記事項に
「売上が厳しいですがよろしくお願いします」
 との記載を見かけた時には、カチンときた。

 この仕事は調味料関係をメインに製造しているM社のデモ。
「売上にはこだわらない。ただ元気よく一生懸命やってくれたらいい」
 との要望がいかに建前そのものか、この一文でよくわかる。

 売上が欲しいのならはっきり書きなさいよ。
 その方がすっきりする。

 そういうMに尻尾を振って付和雷同するエージェンシーと派遣会社の担当員。
 やっぱり現場に立ったことのない人だなあと思う。

 もっとも、人間って、自分が体験したことでないことに関しては、よくわからないのよ。
 昨日も買い物に出かけたスーパーで
「どうして大根がこの値段なんや? 売場にあった値札に書いてあったのと違う」
 と、レシート片手にすごい剣幕でレジ係に詰め寄り
「間違うとはけしからん! もっとプロ意識を持って仕事をせんかいっ!」
 と怒鳴り散らしていたおっさんがいたけれど、あれは、彼女のミスではなく、青果売場が
売価変更していなかった可能性が強い。何故なら、今のレジはバーコードをスキャナに読み
取らせば自動的に価格が計上されるしくみになっているからだ。
 こういう想像がつくのも、短期間ながら私自身にレジを打った体験があるせいかも知れな
い。
 
 他部門のミスを、すべてあんたが悪いと、責任をとらされるレジ。
 売上の責任を最終的に押し付けられるマネキンに似ている。

 私はあまり売ろうと言う気はないのね。
 この夏に担当した青汁も、
「毎日飲まれなくてもいいんですよ。だって、高いですもの。このご時世にこの値段はね!
でも、野菜不足は健康によくない。ですから、今日はお野菜が不足しているなとかここの
ところ外食ばかりだなとかおなかの調子が悪いとか、そういう時に補助として飲んで下さ
い。それでいいんですよ。幸い、これは保存がききますしし、今日は少し安いですしね」
 という売り方をした。
 結果的にそれが売上につながり、多い店舗では一日三十個ほど販売したが、メーカーの
人は怒るかも知れないね。
「毎日飲んでくれた方がうちはもうかるんや」
 と。
 ほんま、欲のない販売員やわ。

 まあ、メインにしている派遣会社は売上にやかましい社風なのに、この青汁の仕事を紹
介してくれた会社は若いマネキンが多いせいもあって売上には鷹揚。そこいらもあって、
私もリラックスして現場に立てた。

 それでも、ギャラ分の働きをすることは最低限の義務だから、やる時はやる。