急須がない家は、今日日、珍しくない。

滋賀県甲賀奈良県木津と、このところお茶にゆかりがある地での仕事が相継いでいる。
お茶好きの私にとっては、嬉しい限り。昼休みや仕事が終わった後、ご当地茶を買う我が姿を心にえがくだけで、ウキウキしてくる。

何年前かしら。某茶葉メーカー発売の自慢の茶(緑茶)を、そこの営業のお姉さんと組み、近畿地方の某量販店でデモンストレーションしたことがある。
「値段は張るけれど、この味だもの。お客様は大満足よ。二人で頑張って20袋は売りたいよねえ」と、最初のうちこそやる気満々だったお姉さんだけれど、一時間経ち二時間経つうちに、そのポジティブモードオンリーな口調もすぼみがちになった。
だって、売れる売れないの前に、その店舗に来る少なからぬ数のお客様に、こう言われたのだもの。

「緑茶ねえ! うちは、そんな客用の高級茶、滅多に淹れへん。やから、買えへんし、したがって急須自体、もうあらへんがな。必要ないさかいに」。

そうなのよ。
急須がない家。少なくとも21世紀になってからは、決して珍しくない。
急須必需の緑茶が売れない理由、深刻過ぎるワ。
お姉さんが受けたショックはいかほどのものだったろう。
さらに悲しいことには、お姉さんとコンビのデモンストレーションから年月が経った現在、客観的にみて、家庭の急須離れは進んでいる。

ううむ。

茶葉のお茶業界でのシェア。今後、益々減っていって、やがてペットボトルのお茶の飲み方や味こそが、「正道」になるんだろうか?