派遣会社で、「Aさんはこの日はここへ行って。Bさんは、、、」などと人選を担当する係を人選コーディネーターと呼ぶ。
この人選コーディネーターに、必ずしも現場体験は必要でないことは、前の投稿で述べた。
「おかしいよね。現場を知らない人が、、、」といぶかしく思うデモンストレーターも多いだろうが、これにはこれで訳があるのだ。
あるベテランデモンストレーターが、私が何気なく発した疑問、「デモンストレーター体験が全くない者が、まさに自分たちの給料分まで含めて会社に利益をもたらすデモンストレーターを管理し、指揮命令する立場になぜ任命されるのか? 」にこたえてくれたことがある。
「完璧、会社の思惑やねん」。
彼女は言い切った。
「デモンストレーターでなく他の業種でも、現場体験が長いと、どうしてもそちらの方に肩入れしてしまいがちやからな、、、」
すなわち、現場が生物(なまもの)である以上、泥臭い業務が多い。
泥臭いと言うことは、面白いことと同じくらいしんどいことも多いと言うこと。
おわかりだろうか。
この面白さを体験した上であっても裏のしんどさをも身に染みてわかっている人選コーディネーターなら、どうしてもデモンストレーター側に立ってしまい、時に「非情」の立場に立たねば経営が成り立たない会社側の期待に応えられない。
が、そこのところを知らない人間なら、知らないがゆえに、ビジネスライクに徹した人事が出来るわけ。
ふうむ。
わからないでもない。
会社は、営利追求が、そもそもの目的なのだから。
ちなみに人選コーディネーターにも、二通りある。
メーカーから仕事をとってくる営業を兼ねているタイプ。
営業は別にいて、自分は人選と事後処理の事務のみしているタイプ。
前者なら、はっきり言って多少は高圧的な態度をとられで気にならない(私も営業ウーマンをしたことがあるから)けれど、後者なら、あまり上から目線で指図されるとカチンとくるよ、もう明かしてしまうが。
十数年間前、ある代理店の人選コーディネーター兼事務の女が、私に電話をかけてきた。
「レシートは、金額が見えるように、ちゃんと貼って下さいっ! 少しくらいずれてもいいですからねっ! 気をつけてくださいよっ!」
この女、私の娘くらいの年齢。
ムカついた。
「偉そうにぬかすお前の給料、誰が稼いでいるんや? 寒い現場で震えながら、しかも店側のプレッシャーに耐えて仕事をしている私らやんか! お前なんか、私たちが一生懸命働いている時、暖房の効いた部屋で温かいお茶でも飲みながら、報告書の数字を見て、この人はなー、と話しているんやろ。一度でも現場に立ってみぃ!」。
とは言え、彼女の立場もわからないではない。
多忙な業務の中、金額が見えないように貼られたレシートをいちいち剥がして、ちゃーんと金額が見えるようにした上でメーカーにファクスし、多分コピーもしてファイルしないといけないのだから。
コピーとファクス。
それぞれは簡単な作業でも、重なるとそうではなくなるものだ。
ま、現場体験がない者が現場を仕切る。
これが世の常なんだろう。
ちなみに、私は現場大好きよん。
つまり、人に管理される身分から抜けられないと言うことね。
生涯一労働者。
これも悪くないか。
もともと、人に指図するのも指図されるのも好きではないタイプだ。